■下大利老松神社
住所:大野城市下大利2-11-1
2022年に大きな節目を迎える、下大利の住環境とは?
日経BP総研が発表した「シティブランド・ランキング-住みよい街2017-」で1位に輝き、地価上昇率も右肩上がりの大野城市。今回はその中央部分に位置し、駅のリニューアルで今最も注目を集める「下大利」にフォーカスする。このまちについて語ってくれるのは、『GOLD COAST Cafe+Dining(ゴールドコーストカフェ+ダイニング)』のオーナー・山本貴美子さん(写真中央)。下大利が地元という山本さんから、地域の特性や住み心地などを聞いてみよう。
豊かな自然・歴史とともに、快適な暮らしを楽しめる下大利の立地。
実家の所有地であった下大利1丁目の一角を受け継ぎ、老朽化していた建物を建て替えて2019年に『GOLD COAST Cafe+Dining』を開業した山本貴美子さん。娘さんがオーストラリアのゴールドコーストに住んでいることから、オーストラリアンスタイルをコンセプトにしたカフェを営み、毎日店に立ちながら大勢のお客さんを迎えている。
生まれも育ちも下大利という山本さんの話によると、50年前の西鉄下大利駅は、現在の場所からやや北側の『GOLD COAST Cafe+Dining』付近にあり、お店の前の道路が駅前通りとして栄えていたそう。今も通り沿いには昔から続く商店が点在し、当時の名残を感じることもできる。ところで下大利は大野城市に位置するが、春日市と太宰府市が下大利を挟むように隣接している。そんな近隣エリアと比べて、下大利はどんな特徴があるのだろう?
「春日は自衛隊基地や春日公園があるので、郊外でありながら人の出入りが活発なイメージがあります(Vol.24 春日市原町2丁目編参照)。また太宰府は歴史的なまちですし、太宰府天満宮があることから県内外の人々が集まる観光エリアですよね(Vol.10 太宰府市宰府2丁目編参照)。それらのまちと比べると大野城市、とりわけ下大利は、“住宅地”としての印象が強いと思います」
山本さんが語るように、下大利駅の近くには下大利団地や一軒家が建ち並び、長く住み続ける住民も多い。主要道路沿いにはマンションやアパートが並び、通りから一歩入った場所には戸建ての住居が密集している。「昨年、旧ダイエー跡地に大規模なマンションが建設されました。あと、うちのお店の裏にも、新たに大きなマンションが建つみたいですよ」と山本さん。このように集合住宅が増えているということは、土地評価が上昇している表れだろう。
西鉄下大利駅東口からほど近い場所にある下大利団地
山本さんのもとで働くスタッフ・海田さん(写真左端)曰く、「下大利地区の住民は大野城市が運営する『中央コミュニティセンター』を利用することができて、さまざまなサロンや季節のイベント、スポーツサークルに参加できるんです。実は私、下大利の利便性に惹かれてこっちに引っ越してきました!」とにっこり。
お店のスタッフも下大利に馴染みがあり、和気あいあいとした雰囲気
「下大利の住民は、JR水城駅と西鉄下大利駅のWアクセスが可能だから通勤・通学も快適ですよね。車でちょっと行けば太宰府インターチェンジや都市高速道路(水城出入口)にすぐアクセスできるので、久留米や熊本などの南方面にも、博多や北九州などの北方面にも移動しやすいです」。そう語る山本さんのお気に入りのスポットは、昔ながらのノスタルジックな駅舎のJR水城駅だとか。近代化が進む西鉄下大利駅とは異なり、レトロな佇まいが心をほっこりさせるそうだ。
下大利3丁目にあるJR鹿児島本線・水城駅。博多駅までの所用時間は約20分
JR水城駅前には南福岡自動車学校があり、下大利の住民は運転免許教習所に通うのが楽チンという特権付き。また、下大利には国指定の特別史跡「水城跡」も広がる。天智3年(664年)に日本で初めて造られた城砦で、大城山麓から下大利まで全長約1.2km、幅80m、高さ13mの巨大な土塁(どるい)が鎮座する。春は桜の名所となり、散策を楽しむ人で賑わう。
地域で今最もアツい話題は、西鉄下大利駅のリニューアル事業!
下大利住民の「足」として、地域交通網を担う西鉄下大利駅にも注目してみよう。急行列車を利用すれば西鉄福岡(天神)駅まで約15分で到着し、同駅の1日の乗降客は約1万2千人と言われている。
(※2020年度の調査データより)
2022年4月現在、西鉄天神大牟田線の春日原駅〜下大利駅間では連続立体交差事業が進行中で、きたる8月に高架化と新駅舎の幕が上がる予定。交通事情の改善や駅付近の活気に注目が集まり、先日開催された駅舎のプレオープンには約7千人もの近隣住民が参加した。
西鉄下大利駅の新しい駅舎は、「古(いにしえ)と緑につながる、やすらぎのエントランス」がコンセプト。外観は大野城跡と水城の自然をイメージさせる若芽色を基調とし、マテリアルは水城の土塁を連想させる土を採用している。駅前には歩行者用の屋根とバスシェルターを設置し、駅舎からバス停まで雨に濡れずに歩ける構造だ。
新しく生まれ変わる西鉄下大利駅の駅舎(2022年4月現在、完成前の様子)
高架に切り替わることで春日原駅〜下大利駅間の12箇所の踏切が除去され、踏切遮断による交通渋滞が緩和。踏切事故や踏切の警報音がなくなる以外にも、強固な高架橋を造ることで騒音・振動が軽減するので、沿線地域の住環境が改善される。また、高架下空間に駐輪場や公共施設が設けられる計画もあるようだ。
「踏切による道路渋滞に長年悩まされていた住民が多いと思うので、踏切がなくなって車移動が快適になるのは嬉しいですね!近所の筑紫中央高等学校も現在校舎の改修工事が行われていて、高架下の整備事業に合わせて校門を高架側に設けるという話も聞きました。下大利駅から高架沿いにかけて傘をささずに歩けて、学校までの動線がスムーズになるし、校舎も新しくなるので、高校の人気が上がるかもしれませんね」
筑紫中央高校前の高架下整備の計画によると、白木原駅〜下大利間の高架沿いに、歩行者用屋根を連ねた歩道を設置する予定だとか。また、筑紫中央高校前の高架下に広場および大屋根を備えた複合型交流施設が建設予定。幅広い世代が交流できる“にぎわいの核”の創出が図られるということで、学生だけでなく近隣住民にとっても楽しみな展開が待っている。
さらに下大利駅北側には公園が新設されるそうで、ここも住民同士の新たな交流拠点となりそうだ。大野城市が掲げるように、新駅舎周辺の整備によって利便性が向上し、地域の賑わいとつながりが育まれることが期待できる。
50年に一度の変革期!? 情緒溢れるまちなみと、発展を遂げるインフラ事情。
西鉄下大利駅西口を出ると、昔ながらの飲食店や小さな物販店があちらこちらに建ち並び、時が止まったような景色が広がる。通称「エル通り」には、地元住民のソウルフードである「むっちゃん万十」や「やきとり安兵衛」などの老舗が集合。駅周辺は他にも唐揚げ屋や居酒屋など地域に根付いた店が点在し、近隣住民の立ち寄りスポットが充実している。
西鉄下大利駅前の「エル通り」
西鉄下大利駅から徒歩5分ほどの場所にも、地元密着型の商店が軒を連ねるローカルストリートが続く。「うちのお向かいの布団・寝具店の『やない』さんや、同級生がやっている酒販店の『福田酒店』さんも昔から続く老舗ですね」と山本さん。他にも八百屋や日本茶専門店、パン屋など“店主の顔が見える店”が通り沿いに並び、ホッと安心できる雰囲気。
ちなみに下大利駅前広場では、下大利商店会が中心となって七夕祭りやハロウィンイベント、クリスマスのイルミネーションが毎年実施され、子どもから大人までみんなが集まる風物詩的イベントを多数開催している。近所の「くすの木公園」でも、七夕に合わせてステージイベントや物販イベントが行われている。
(※2020年以降はコロナウィルス感染症拡大予防のため中止に)
そんな古き良き情緒が息づく下大利エリアも前述の通り、西鉄天神大牟田線の連続立体交差事業をきっかけに、利便性に優れたベッドタウンとして著しい成長を遂げている。長年このまちで暮らしてきた山本さんも、「この規模の変化は、私が知る中でも初めて。まさに大きな“節目”じゃないでしょうか」と熱い視線を注ぐ。
「10年前に始まった鉄道高架橋建設工事を皮切りに、ここ数年でマンションやビルが相次いで建ち、まちの景色がずいぶん変わったように思います。8月の新駅舎の開業に続き、新しいスポットがあちこちに誕生するのでは…!?これからも下大利のまちなみは変化していくと思いますし、どんな風に活性化するか楽しみです。若い世代の方も一緒になって、まち全体が盛り上がると嬉しいですね!」
高架事業に伴い、様々なまちづくり計画が予定されている下大利。まちが新たなフェーズを迎えたことで、住民同士の活発なコミュニティや、生活の利便性・快適性の向上など、今後もいろいろな効果がもたらされるだろう。そういった変化に対する住民の期待と関心が、さらにまちを盛り上げる気運につながり、住み心地のいい理想的な環境が築かれていくはずだ。引き続き、これからの下大利の発展に注目し続けたい。