極小エリアマガジン
福岡市博多区春町2丁目
#51
Interview
「西鉄天神大牟田線の新駅「桜並木駅」に期待が集まる、春町エリアの住環境」
『オーガニック専門店 おやさいや菜(さい)』 オーナー・江口寿恵さん

西鉄天神大牟田線の新駅「桜並木駅」に期待が集まる、春町エリアの住環境

今回取り上げるのは、2024年春開業予定の西鉄天神大牟田線の新駅「桜並木(さくらなみき)駅」に注目が集まる福岡市博多区春町(はるまち)。新駅の目の前に位置する春町は、駅名「桜並木」の由来に深く関係するエリアだ。春町自体はとてもコンパクトで、端から端まで徒歩8分程度で行ける、まさに“極小エリア”。そんな小さなまちで今起きていることとは?住み心地や住環境の魅力についても探るために、春町2丁目に店を構える『オーガニック専門店 おやさいや菜(さい)』のオーナー・江口寿恵さんに話を伺った。

「春町」ってどんなまち?周辺環境から地域の特性をチェック!

福岡市博多区春町は、博多区南部に位置する小さなまち。県道など主要道路の交通量は多いものの、一歩入るとのんびりとしたムードで、まちと住宅地がほどよく調和している印象だ。「遠方のお客さんに、『住所は春町です』と言ってもわからない方が多いですね」と語るのは、『オーガニック専門店 おやさいや菜』のオーナー・江口寿恵さん。2014年に春町交差点前にお店を開き、9年目となる現在もご近所さんをはじめ、隣町や遠方など、たくさんのお客さんを引き寄せている。

「春町の立地を説明するときは、『博多区の一番下の端っこで、雑餉隈(ざっしょのくま)のすぐ近く。大野城市と春日市の境目付近です』とざっくり伝えると、だいたい理解してもらえます。道の向こうは大野城市になりますが、ぎりぎり福岡市民です(笑)」

主要なまちにギュッと挟まれた立地の春町だが、江口さんがここにお店を構えようと思ったきっかけは何だったのだろう。

「春町でお店を開く前は、近くのJR南福岡駅の前や近隣パーキングの一角を拠点に、テントを出して対面販売していました。そう、出店販売がうちの原点なんです。9年前に今の物件を紹介してもらい、ここなら広く使えるし、目の前の桜並木も気持ちいいなと。そして、子どもが通っていた小学校の校区内だったことも好都合で、出店を決めました」

江口さんの店の前には、地域のシンボルである桜並木が600mほど続く

当時江口さんが住んでいた地区と春町は校区が同じで、お子さんが下校時にそのまま店へ寄れる環境だった。「夕方になると子どもが『ただいま〜』と私の店に直行し、仕事終わりに一緒に帰るのがお決まりの流れでしたね」と江口さん。聞けば、今は住居も春町に構え、この界隈に住んで20年以上だとか!

「私は柳川出身なので、この辺りが地元というわけではありませんが、20代の頃に雑餉隈の商店街付近で1人暮らしをしていたんです。当時は職場が薬院だったので通勤に便利な西鉄沿線が良くて、その中で薬院や大橋より家賃が安い雑餉隈を選んだという感じ。住んでみた結果、すごく気に入って4年ほど住みましたね。その後、しばらく別のエリアで暮らしたりもしたけれど、馴染みのあるこの界隈に再び戻り、それからもう長いこと春町界隈に住んでいます」

春町から徒歩圏内の雑餉隈には、昭和48年設立の『銀天町商店街』がある。約200mのアーケード商店街に衣料品店や飲食店、食料品店、靴屋、文具店などが軒を連ね、朝夕の通勤時には商店街を抜けて雑餉隈駅に向かう人も多く見られる。「あの下町っぽい雰囲気が好きですね。商店街の温かさといい、ゆったりとした穏やかなまち並みといい、この界隈にずっと住み続けたいと思わせる大きなポイントですね」と江口さんは笑う。

連続立体交差事業で賑わう西鉄沿線。Wアクセスの魅力も特筆ポイント。

2003年から行われてきた西鉄天神大牟田線の連続立体交差事業が最終段階に入り、周辺住民にとってより安全で、快適な環境が整う。すでに雑餉隈駅〜下大利駅間は高架化され、全19カ所の踏切が除去されたことで踏切による交通渋滞が解消した。同事業で複数の駅舎が建て替わり、それによってまちが活気づき、広範囲でまちの整備が進んでいる。特に注目を集めているのが、2024年春に開業を予定している新駅「桜並木駅」の誕生だ。また、それと同時に新たに生まれ変わる雑餉隈駅の駅舎も、北口改札の増設や駐輪場の整備など、より快適性と利便性を高めた駅舎となる。

西鉄「雑餉隈駅」も新駅と同じく、2024年春に開業予定

「西鉄沿線に新しい駅と新しい駅舎ができるからでしょうね。春町から雑餉隈にかけて都市開発が着々と進んでいると感じます。古い建物が取り壊されて、新しいマンションや病院が建っていますし、お店の裏にも新しい建物が建つ予定だとか。まち全体が整備されてきれいになっている印象で、ご近所さんたちが『雑餉隈バブルがキテる!?』と噂しています(笑)」

ビルの建て替えが進み、新しいマンションが増えている

新駅・桜並木駅の構造は2面2線。改札口が2カ所、バスやタクシーが乗り入れられるロータリーも整備され、広々とした公共空間が確保されるようだ。駅舎のデザインは「在りし日の豊かな自然に想いをはせ、優しく芽吹く街のエントランス」をコンセプトに、白色のイメージカラーと若緑色のアクセントカラーを用いた外装になる予定。また駅ビルに、飲食・物販などのテナントの入居も検討されているとか。

開業に向けて建設工事中の西鉄「桜並木駅」

桜並木駅の名称は一般公募の結果をもとに、福岡市や地元代表者との意見交換会を経て決定されたもので、その名の通り、新駅南側(西春町〜春町)に広がる桜並木から取ったネーミング。長年にわたり地域住民が丁寧に手入れしてきた桜並木のように、新駅もまちのシンボルとして親しまれてほしいという想いが込められているそうだ。

「桜並木駅の名称、本当に素敵ですよね。うちの店の前にも桜並木が続いているんですよ。春の見頃の美しさは言わずもがなですが、桜の木は季節ごとに表情が変わるので、一年中四季折々の景色を楽しめます。春は淡いピンク、夏は眩しい緑、秋は赤く紅葉し、冬に落葉して朴訥(ぼくとつ)とした姿になるのも風情たっぷり。心癒す風景が600mほどズラ~ッと続き、圧巻です」

春になると一斉にピンク色に染まる桜並木

西鉄沿線のトピックも大きいが、春町はJR沿線にも近いというWアクセスの利便性も特筆すべき点。最寄りのJR南福岡駅は春町から徒歩10〜15分と近く、さらに快速列車の停車駅であるのもうれしいポイント。JR博多駅までわずか約8分とアクセス抜群!

「JR南福岡の駅ビル開業が1999年ということで比較的きれいで、駅ビル内にスーパーや飲食店、病院、書店、100円均一ショップなどが入居しているので何かと便利ですよ。うちの店のオープン当初は小学生だった子どもが現在高校生になり、通学では西鉄電車を利用して、部活の大会で遠征に出かける際はJRを使うことも。西鉄沿線とJR沿線のWアクセスは本当に助かります」

春町の未来は、老若男女にやさしく、快適な住み良いまち。

Wアクセスの利便性が春町での暮らしの快適性を支えているが、前述の通り雑餉隈の銀天町商店街をはじめ、近所にドラッグストアやスーパーマーケット、銀行、ホームセンター、病院が揃い、何不自由なく暮らせる住環境もこのエリアの魅力。

「お店の食事会で雑餉隈の飲食店へ行きますが、歩いても行ける距離なので移動が楽ちん。グルメサイトで高評価の焼き鳥店や人気のカフェが結構あるんですよ。身近な場所においしいグルメスポットが充実していると嬉しいし、楽しいですよね」

春町1丁目にある『ラーメン 味心』は地元客のみならず、遠方客も多い人気店。「昼間は行列をつくり、夜は午前4時まで営業。夜もお客さんが多いですよ」と江口さん。また、“博多のソウルフード”として名高い鉄板焼肉を提供する『元祖びっくり亭』の本店も近所にあり、テレビ番組で取り上げられた翌日は行列がズラリとできるとか。博多を代表する有名店や人気店が徒歩圏内にあると、食への楽しみが高まり、暮らしの幸福度を上げるきっかけにもなりそうだ。

ちなみに、江口さんのお店にも手作りのオーガニック弁当を買いに来る人や、旬の野菜を求めに訪れる人など、ひっきりなしにお客さんの姿が。その様子を見ていると、近隣住民をはじめとする常連客から日常的に親しまれていることが伝わってくる。

「小さな子どもにも安心して食べさせられるという、オーガニック食品専門店の特性もあると思いますが、うちのお店は若いママのお客さんが多いです。周りに新しいマンションができているから、そこに住まれている方も利用してくださっているのかな。丸8年お店を続けていると、お腹の中にいたお客さんのお子さんが小学生になっていたり、赤ちゃんだったお子さんが初めてのおつかいに訪れたりも。地域の子どもたちの成長を見守れて、それが小さな楽しみになっていますね」

春町3丁目の『春町公園』も子どもたちの遊び場に

我が子とともに、地域の子どもたちの成長も日々の活力になるという江口さん。これは、長く住むほどに感じられる豊かな瞬間なのかもしれない。店の前の桜並木と一緒に年輪を重ね、子どもの成長を喜び、お客さんと旬の味覚や食の楽しみを分かち合う。そんなささやかな幸せが春町の暮らしにはたくさん転がっているのだ。

インタビューの最後に、江口さんにこれから春町エリアに期待したいことは何かと尋ねてみた。

「桜並木駅が開業することで、ヤングファミリーの住民が増えて、まちが活性化すると良いなと思います。歩いてすぐの場所に設備が整った駅ができ、買い物スポットも充実すれば生活の利便性がぐんと向上するでしょうから、子育て世帯はもちろん、地元のご年配の方にとっても助かる点が多いと思います。子どもたちの元気な姿をみんなで見守り、また若い世代の活気が集まって、まちがもっと盛り上がるといいですね」

西鉄天神大牟田線の新駅・桜並木駅の開業で、従来のWアクセスからさらに利便性がアップし、ますます生活に弾みが出そうな春町の暮らし。駅を中心としたまちの整備で、小さな子どもからシニア世代まで、みんなにとって“快適でやさしいまち”へと進化していくだろう。都会を近くに感じつつ、肩の力を抜いて穏やかに暮らせるという、都会と郊外の境目ならではの魅力的な住環境。2024年春を皮切りに、ますます充実していきそうな春町の暮らしに大きな期待を寄せたい。

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春は桜のトンネルに!新駅名の由来にもなった美しい桜並木

■桜並木
住所:福岡市博多区西春町1丁目〜春町3丁目

西春町から春町にかけて広がる約600mもの桜並木。これらの桜は、1957年に地元の人々の寄付によって植樹されたもので、60年以上まちのシンボルとして親しまれている。中央分離帯が遊歩道になっていて、その両端に桜の木がずらりと並び、春になると美しい桜のトンネルに。「並木道を散歩すると気持ちいいですよ」と江口さん。桜並木駅の開業に合わせ、駅と桜並木をつなぐ緑道が新たに整備されるそうで、その完成も楽しみだ。

I’m Here
オーガニック専門店 おやさいや菜

住所:福岡市博多区春町2-4-13
TEL:092-585-8031
営業時間:10:00〜18:30
定休日:なし
https://www.instagram.com/oyasaiya.sai/

農薬不使用の野菜や有機野菜、無添加食品を揃えるオーガニック専門店。小さな子どもも安心して食べられて、野菜も皮のまま調理して栄養を丸ごと味わえると、健康志向の人や子育て世帯からも評判。オーガニックのお弁当や手作りパン、グルテンフリーの焼き菓子も人気で、足繁く通うリピーターが多い。毎月第4日曜はバラエティ豊富な出店者が集まる「月イチマルシェ」を開催。他にも旬の野菜や食材を集めたマーケットや料理教室などのイベントを企画し、健やかな食文化をさまざまな角度から提案している。

〜 エリア紹介:福岡市博多区春町 〜

福岡市博多区の南部に位置し、大野城市と隣り合う小さな地域。春町を通る主要道路は3つあり、博多と筑紫野を結ぶ県道112号線(旧3号線)、那珂川と宇美町・飯塚を結ぶ県道56号、井尻や大橋方面につながる県道49号が通る。2022年に実施された西鉄雑餉隈駅〜下大利駅間の高架切替えにより、地域住民を悩ませていた踏切渋滞が解消され、車移動の快適性が大幅に向上。さらに、2024年春に西鉄雑餉隈駅~春日原駅の間に新駅・桜並木駅が設けられる予定で、公共交通の利便性が向上すると期待されている。地域内にドラッグストアやコンビニ、公園があり、徒歩圏内に雑餉隈の商店街やJR南福岡駅、銀行、病院、飲食店も多数点在する。

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