極小エリアマガジン
久留米市小頭町
#23
Interview
「まちとまちの狭間が心地いい、小頭町の温和な暮らし。」
『3po cafe .home(サンポカフェ ホーム)』 オーナー・上野正高さん

まちとまちの狭間が心地いい、小頭町の温和な暮らし。

今回は再び久留米市をフォーカスし(Vol.5 久留米市通町編参照)、西鉄久留米駅の隣駅「西鉄花畑駅」に降り立った。てくてくと歩いて向かったのは久留米市小頭町(こがしらまち)。繁華街と隣り合う小さなこのエリアは、昔から続く老舗飲食店やセンス溢れるセレクトショップ、カフェなどが点在し、わざわざでも足を運ぶ遠方客が多くいる。そんな小頭町での暮らしを探ってみるべく、『3po cafe .home』のオーナー・上野さんに話を伺った。

郊外以上、都会未満。絶妙なロケーションが暮らしやすさの理由。

「個人的な感覚ですが、久留米に住むなら小頭町はとてもいいエリアですよ!」

“小頭町ってどうですか?”という漠然とした質問に、こう明快な返事をくれたのは『3po cafe .home』のオーナー・上野さん。もともと太宰府市出身で、大学時代までは福岡、社会人から東京に住み、当時趣味だったサーフィンを楽しむなど日々を謳歌していたそう。そんな上野さんが久留米を拠点にし始めたのは2009年のこと。2006年にワーゲンバスを使った自家焙煎コーヒーの移動販売をはじめ、その3年後に奥様の地元である久留米市に移住。都会に住んだり、海を行き来したりと、アクティブに暮らしていた人にとって、少し離れた久留米市小頭町の生活はどうか、さらに詳しく聞いてみた。

「若い頃に生活していた場所と比べると、たしかに小頭町は人の流れが穏やかですね。落ち着いた住宅街とまちの雰囲気が溶け込んでいて、静かな一面もあるけれど、『西鉄久留米駅』を中心とした繁華街まで自転車でサクッと行けるベストな距離感。あと、特急・急行列車が停まる『西鉄花畑駅』が最寄りにあるので、天神方面に行きたい時も利便性がバツグン。全てが絶妙なんですよ」

西鉄久留米駅や花畑駅から程近い小頭町は、繁華街と住宅街の狭間のようなロケーション。北東を向けば飲食店などが連なる「西鉄久留米駅」「六ツ門」の賑やかなムードを感じ取ることができ、逆に南西を向くと、マンションやアパート、一軒家が並ぶ住宅街の景色。方角によって印象が変わり、まちの雰囲気がグラデーション化している。上野さん曰く「思い立った時にパッと行動したい僕としては、ここより賑やかな都会でも、ここより静かな住宅地でもなく、住むなら小頭町がちょうどいいんです」とにっこり笑う。

上野さんが営む『3po cafe .home』は、小頭町の大通りから一本入った古いアパートの2階にある。築50年以上のレトロな木造アパートがこうして現存しているのもなかなか貴重だ。「カフェを開くために物件探しをしていて、この物件を見つけた瞬間一目惚れに近い感覚で即決しましたね」と、エリア選定は物件との縁が決め手だったという。当時、周りにあったのは老舗の飲食店や商店くらいで、5〜10年前からおしゃれなカフェやショップが少しずつ増えてきたとか。

「まったく土地勘がないところからスタートしたので、近所の小さなお店や、西鉄久留米駅付近、六ツ門付近、周辺の商店街など、全てが新鮮に感じられましたし、開拓するのも楽しかったですね」

小頭町神社の夏祭りでは、的屋の出店ではなく地元の人々が自ら焼きそばをふるまったり、ゲームの出店を設けたりと、昔ながらの形式が継承されているそう

車がなくても大丈夫。アクセス良好だから身軽かつアクティブに楽しめる!

2004年に最寄駅の西鉄花畑駅が急行・特急列車の停車駅となり、駅界隈の都市計画も進んだことで、道路が整備され、慢性化していた渋滞が緩和。それに伴い、小頭町の利便性や住み心地もみるみる上がっていったという。

「福岡市内の人から見て、郊外の生活は車がないと成り立たないって思うでしょう? でもね、僕はこのエリアに住みだして車はいらないなって感じました。自転車さえあれば生活に必要なものを買いに行けるし、久留米の繁華街をはじめ主要なところにもあちこち回ることができます。遠くに足を延ばしたい時は列車やバスの路線が充実しているので、個人的には車の必要性をさほど感じません。昔から住む地元の方は車社会が根付いているから、もしかすると僕の意見とは異なるかもしれませんが、レンタカーやカーシェアが近くにありますし、現代のライフスタイルなら問題なく快適に過ごせる環境ですよ」

確かに、まち自体がコンパクトなうえ、自転車または徒歩圏内にスーパーや飲食店など必要なものが全て揃っている。また公共交通機関のアクセス性も高いからこそ、車を持たなくても不便さを感じずにフットワーク軽く暮らせそうだ。車やバイクを持たず身軽に暮らしたい人にも打ってつけだろう。

「福岡市内で例えると、西鉄久留米駅付近を『天神』とするなら、小頭町は『平尾』に近い雰囲気かな。繁華街に近すぎず遠すぎず、ゆったり落ち着いたムードが流れていて、新旧の個性的なお店が点在している。それにプラス、特急・急行列車が停まるというメリットが付いたのが小頭町ですね!」

(写真左)小頭町交差点から繁華街の六ツ門はすぐそこ
(写真右)西鉄花畑駅近くの小頭通りは、交通量が穏やか

国道3号線と同じく国道209号線も筑後地方の大動脈的な主要道路なのだが、小頭町には国道209号線が通っていて車の交通量が多い。その一方で、他の通りは比較的静かで穏やか。まっすぐ延びる道とともに大きな空が広がり、歩いていてすがすがしい。

「地元の人は久留米愛が強い方ばかり。福岡市内や他県にあまり出ずに、行動範囲も人付き合いも地元主義の方が多い土地柄。だからこそ、初めましての人や他のエリアの人に対して一瞬シャイな反応を見せたりもしますが、一度心を通わせられたら距離感がぐっと縮まり、とても懐が深いお付き合いができます。信頼関係やコミュニティーを重視する文化だからこそ、住民としては横つながりの安心感を得られると思います」

休日に近所を楽しむとしたら?小頭町のおすすめコースをご紹介。

小頭町だけに限らず、久留米に住む人々は、“商売のまち”ならではの鋭い審美眼も持ちあわせているとか。「みんな舌も目も肥えているし、お店側もしのぎを削りながら切り盛りしています。中途半端な志で適当なものを販売しても、そう長くは続かないという非常にシビアなまち。だけどその分、クオリティーの高い飲食店や物販店が生き残り、結果的にまちのレベルが高く保たれているのだと思います。どこに行っても“外れ”がないですもん!」。そうしみじみ語る上野さんに、【小頭町でのおすすめの休日の過ごし方】を教えてもらった。

「朝活をするとしたら、小頭町交差点から徒歩3分の場所にある池町川沿いの『Neutral Bay Cafe(ニュートラルベイカフェ)』へ。朝8時からオープンしていて、オーストラリア帰りのオーナーが自家焙煎コーヒーやエッグベネティクトなどを提供していて、とても美味しいですよ。そのあとは小頭町公園に行って、木陰でゆっくり本を読んだり、散歩中のワンコを眺めたり、緑が溢れる中でリラックスして過ごすのもいいですね。ちなみに、小頭町公園は桜の絶景スポットなので、春の花見シーズンは必ず行ってほしいですね!」

『Neutral Bay Cafe』などが並ぶ池町川沿いは、散歩コースとしてもおすすめ

地域の憩いの場といえばここ、『小頭町公園』

「住所は小頭町ではありませんが、目と鼻の先にある『久留米シティプラザ』に立ち寄るのもいいですよ。コンサートやお芝居、アート系の展覧会、セミナーなどが行われているので、インプットに最適な場所です。ランチはうちのお店の斜め向かいにある老舗『べら安食堂』はいかがでしょう?うどんスープをベースにしたちゃんぽんが人気でなんです。今となっては貴重な“味のある佇まい”も魅力的」

『べら安食堂』の名物・ちゃんぽん

「あと、小頭町公園の目の前にある『カンブツ屋 + cafe 空豆』も紹介したいですね。店名の通り、乾物やオーガニック食品などを揃えているのですが、窓際でのティータイムも最高です。公園で遊ぶ子供たちや青々とした樹木を2階から眺められて、気持ちがいいですよ。そして、Made in Kurumeのスニーカーを扱う『PERSICA(ペルシカ)』にもぜひ行ってみてください。〈アサヒシューズ〉を中心に、〈ムーンスター〉とともに久留米の二大シューズメーカーのスニーカーを取り揃えていて、オーナーの知識とセンスには脱帽。県外からのお客さんも集まる注目の存在です!

『カンブツ屋 + cafe 空豆』の窓際の特等席。オーナー・藤丸さんとのおしゃべりも楽しい

上野さんが紹介する場所やお店、その一つひとつにリスペクトと愛が込められていて、店主同士のつながりはもちろん、一個人として本当に気に入っている場所であることが伝わってくる。

例年ならば、これから小頭町付近はお祭りムードで賑わう季節。通常は6月末から7月にかけて「ほとめき通り商店街」にて土曜夜市が繰り広げられ、8月頭は筑後地方最大のお祭り「水の祭典久留米まつり」でまち一体が賑わい、8月5日は「筑後川花火大会」が大々的に行われる。それらを楽しむのが小頭町を含めた久留米の夏の風物詩。昨年・今年はコロナ禍でそれぞれ自粛・縮小となったが、来年こそは!とみんなが心待ちにしている。それまではお気に入りのスポットで思い思いの時間を過ごしながら、ゆったりと日常を楽しんでいこう。気持ちをほっと和ませてくれる“居場所”が、小頭町にはたくさんあるから。

Recommend Spot in Kogashiramachi

1930年創業の老舗食堂。昭和の香り漂う、味わい深い名店。

■べら安食堂
住所:久留米市小頭町158-1
TEL:0942-32-2444
営業時間:11:00~20:00
定休日:木曜

この場所だけ空気感が異なるような、昭和時代のノスタルジックな雰囲気が漂う『べら安食堂』。うどんやそばメニューを中心に、カツ丼やチキンライスなど食堂メニューを提供。中でも人気なのがちゃんぽん(600円)で、うどんスープをベースにしているので魚介の出汁が効いてほんのり甘い味わい。“ここでしか味わえない”空気感とおいしさに、昔の常連客が懐かしそうに再訪する姿も。

I’m Here
3po cafe .home(サンポカフェ ホーム)

住所:久留米市小頭町14-10 榎荘2F
TEL:0942-80-4202
営業時間:11:30~19:00
定休日:日曜
https://www.instagram.com/3po_cafe/

築50年を超えるレトロな木造アパートの1室にて、オーナー・上野さんが有機無農薬・フェアトレード専門の自家焙煎コーヒーを丁寧に提供するカフェ。木のぬくもりとコーヒーのいい香りに包まれた店内にいると心がほっと和み、ついつい長居してしまうほど心地いい時間が流れる。手作りスイーツとコーヒーの組み合わせを楽しむ女性客も多いが、最近は一人でフラッと訪れる男性客も増えているとか。初来店の際は、オリジナルブレンドコーヒー(450円)をぜひ。

〜 エリア紹介:久留米市小頭町 〜

西鉄久留米駅の南西部に位置し、商店街が連なる六ツ門に程近いエリア。最寄駅は西鉄久留米駅の隣駅である西鉄花畑駅で、徒歩5〜15分とアクセス良好。また国道209号線を中心に、西鉄久留米駅に向かう「広又通り」、JR久留米駅方面へつながる「小頭通り」など、複数の主要道路が通っているので車やバスを使った往来もスムーズ。JR久留米駅は約1.5kmの距離とWアクセスも可能とあって、小頭町に住みながら天神や博多に通勤する人も多い。「久留米総合病院」「聖マリア病院」をはじめ、先進医療を実施する医療機関が充実し、市役所も徒歩圏内と好立地。

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