極小エリアマガジン
福岡市東区千早1丁目
#46
Interview
「心和む余暇を過ごせる、東区の交通拠点・千早。」
『Rond-Point(ロン・ポワン)』オーナー・平田章裕(あきひろ)さん

心和む余暇を過ごせる、東区の交通拠点・千早。

2000年頃に開始された再開発事業「香椎副都心土地区画整理事業」により、まちが大きく成長し、近年人気の住宅地として注目を集める福岡市東区千早。Vol.30 福岡市東区千早4丁目編では、中高層住宅や商業施設が建ち並ぶ都心的な駅付近にフォーカスしたが、今回は駅から一歩離れた静かな住宅地の様子も含めて、改めて千早の暮らしを探ってみたい。そこで、千早1丁目でブーランジェリー&パティスリーを営む『Rond-Point(ロン・ポワン)』の平田章裕さんにインタビュー。住まいも千早に構える平田さんから、リアルな住み心地について伺った。

「都心から離れた場所」という印象を覆す、快適なアクセス性。

千早1丁目に店舗を構えるブーランジェリー&パティスリー『Rond-Point(ロン・ポワン)』のオーナー・平田章裕さんは、若い頃にフランスや神奈川の有名洋菓子店で修業し、地元・福岡に戻り独立。1996年に千早にて開業し、パティシエとして活躍する傍ら、県内の洋菓子コンクールの審査委員長や技能検定審査委員も長年務め、“ものづくり”に精通した優れた技能職者として福岡市から「博多マイスター」に認定されている。そんな業界内で有名な平田さんが27年前の独立の際、千早の地を選んだ理由とは…?

「もともとここは、父が経営していたベーカリーショップの支店があった場所でした。私がパティシエの修業から戻って独立の相談をした際、父から土地を譲り受けたのです。個人的な思いとしては、いくつも多店舗展開するより一つの店に集中して、自分自身もパティシエとして立ち、地域に根ざせるお店にしたい——。そんな経緯で、ここにブーランジェリー&パティスリーの店舗を開きました」

「当時、僕自身千早に土地勘がなかったのですが、千早駅から徒歩10分〜15分の場所であるこの1丁目界隈は市営団地や戸建住宅がたくさんあるなといった印象でした。その印象は今も同じですが、裏の住宅地が4〜5年前からちょこちょこ建て変わり、住人の世代交代を感じますね。広い一軒家跡地に2~3軒の戸建てが建っていて、ベビーカーを押す若い親御さんも見かけるので、ヤングファミリー層が増えてきた様子です」

平田さんが言うように、1丁目は千早団地と一軒家が密集する昔ながらの景色が広がる。ちなみに1丁目から6丁目まである千早エリア全体で見ると、駅付近を中心とした再開発事業等により、この10年20年でまちの景色が変わったのでは…?

写真手前は戸建てが並ぶ1丁目。奥に見えるのは駅前の中高層ビル

「そうですね。特に駅周辺は再開発で様変わりし、まちの成長が加速したように感じます。また、千早だけでなく近隣エリアも拓けてきたので、全体的に生活しやすい環境になりました。うちのお店ができてから27年経ちますが、振り返ると2003年にJR千早駅が開業し、近所に『イオンモール香椎浜』、さらにアイランドシティにも大きな子供病院や商業施設ができましたし、ここ数年は再開発が盛んでまちが賑やかに。こうした大規模な開発により、一昔前では信じられないほど千早の認知度が高くなったと感じますね」

もともとは、幼少期から大濠公園付近に住んでいたという平田さん。パティシエの修業から戻り独立する際に、千早に対して「都心から離れた場所」という印象を抱いていたそうだが、開業を機に自宅も千早に構えて実際に住んでみると、驚くほどアクセス性に優れたまちであることを実感したそうだ。

JR鹿児島本線と西鉄貝塚線の駅が徒歩圏内にあり、都市高速の出入口「名島」「香椎浜」も近いので遠出する際もスムーズ。また、西鉄の路線バスが都市高速道路を走るので、天神へ行く際もバスを利用すれば15分強とあっという間。都心から一歩離れた場所にある住宅地でありながら、どこへ行くにもアクセスが良く、平田さんも「住んでみたら想像以上に利便性の高いまちでした」とにっこり。

JR千早駅は快速停車駅なので、北九州方面や博多駅方面へ行くのも快適だ

千早5丁目には香椎宮前駅(かしいみやまええき)がある

新たな施設が続々! 東区の中心部を担う千早のポテンシャル。

旧香椎操車場跡地と周辺地域の再開発「香椎副都心土地区画整理事業」により、千早駅周辺を中心に商業施設や高層マンションが続々と増え、前述のように大きくまちが成長を遂げた。そして今もなお、発展し続けている千早エリア。そのまち事情について、焦点を当ててみよう。

駅周辺や国道3号線付近は、築浅の高層ビルが連立し、近代的な雰囲気とあって都心的な暮らしを楽しみたい人もすんなり溶け込める環境。特に、働き盛りの世代や博多方面に通勤する人、アクティブなヤングファミリーも多く住んでいる印象だ。

「千早駅の目の前に『なみきスクエア』がありますよね。以前、そこでお菓子作り教室の講師を務めたことがあるのですが、設備が整っていて建物デザインも素晴らしく、こんな立派な公共施設があるなんて恵まれた住環境だなと感じます。うちのスタッフも館内の『東図書館』を利用しているようです」

『なみきスクエア』には千早音楽・演劇練習場、東図書館、飲食店があり、住民票の写しや印鑑証明書、戸籍証明、税証明などの発行手続きも可能。2階には誰でも自由に利用できる自習室や、予約制で参加できるワークショップ向けの教室、就学前の子どもや親同士が交流を育めるサロンもあり、子育て世帯の増加が著しい千早住民にとってうれしい公共施設だ。

国道3号線と千早駅入口をつなぐ『千早並木広場』は、近隣住民の憩いの場として親しまれ、夕方になると多くの児童・学生が集まり、活発に遊ぶ姿が見られる。

今も幹線道路や区画道路では開発工事が行われ、新たな商業施設やビル、マンションの建設が相次いでいる。千早のニュースポットとして親しまれているのが、2021年にオープンした“食と健康のグッドサイクル”をコンセプトにした商業施設『ガーデンズ千早』だ。24時間営業のスーパーマーケットや、2フロアの敷地面積を誇る『無印良品』、充実の設備を完備するスポーツクラブが入居し、他にも複数の惣菜店や八百屋、体験型のイベントスペースがあり、地域の子供会の行事なども行われているようだ。敷地内に2022年に登場した『ちはや公園』には子連れファミリーが集まり、広大な芝生広場ではマルシェやお祭りが開催され、オープンデッキのカフェやドッグランも併設。子供から大人まで楽しめる体験型イベントが多数企画されていて、親子で楽しむ人々が多数見られる。

千早3丁目にある『ガーデンズ千早』

そして、2023年5月に『ハローパーク千早店』が国道3号線沿いにオープン。スーパーマーケットの『ハローデイ』やドラッグストア、100円ショップ、バレエスタジオ、学生塾など11店舗が出店し、生活に根付いた商業施設となっている。

オープンしたばかりの商業施設『ハローパーク千早店』

さらに2024年春頃、千早住民も多数利用している『イオンモール香椎浜』が新たに敷地を拡充し、物販や飲食店などを設けた複合施設を開業する予定。地域住民の交流を促進する産地直売所やガーデニングショップ、身体と心の健康を育むフィットネスクラブ、憩いの時間を生み出す飲食店やフリーマーケット広場などを設けるとのこと。

約120の専門店が並ぶ『イオンモール香椎浜』。手前が2024年春開業の新エリアとなる敷地

このように周辺環境を含め、今もまちの発展が進む千早は、より近代的でスマートなライフスタイルを実現できるまちとして定着してきている。一方、千早の隣町である香椎エリアや箱崎エリアは個人経営の個性派なお店が集まり、全体的に下町的な雰囲気が流れているので、箱崎〜千早〜香椎間のまちのコントラストはなかなか面白い。

「昔は“東区の中心部といえば香椎”というイメージでしたが、再開発が進むに連れて東区の中心部が千早方面に南下してきた印象がありますね。千早駅を起点に香椎方面にも箱崎方面にも行けて、さらにはアイランドシティにもつながっているので、交通の拠点として千早がフォーカスされている気がします。アクセス性はもちろん、周りにスーパーマーケットやドラッグストアも充実しているので、生活面では本当に快適ですよ」と平田さんも語る。

健やかな暮らしを楽しめる、リフレッシュスポットが身近に!

公私ともに千早を拠点に生活を送っている平田さんは、アクセス面以外にこのまちの暮らしの魅力をどう感じているのだろう?

「これだけたくさんのマンションや戸建て住居があって、大勢の人々が住んでいるのに、まちが雑然としてなくて、ガヤガヤとした喧騒がなく、緩やかな雰囲気なんですよね。特に、都市高速の高架側の住宅地はとても静か。ゆっくりと落ち着いた時間が自然に流れて、居心地がいいなと感じます。年代やライフステージによって暮らしに対する価値観は変わるでしょうから個人的な実感になりますが、千早界隈には緑溢れる公園や広くて開放的な運動公園がたくさんあって心が休まります」

平田さんのおすすめスポット・千早公園。春は桜が満開に!

「近所では毎朝ワンちゃんと散歩をしている人をたくさん見かけますし、私の友人も中央区からわざわざ『香椎浜中央公園』まで愛犬を連れて訪れているそうです。自転車や車でアイランドシティへ行けば、大きな池を囲むように広がる都市公園もあり、緑豊かな散歩コースが近場にたくさんあります。また、車でちょっと足を延ばして志賀島に行くこともできて、千早は近場のリフレッシュスポットに恵まれているんですよね」

人気のドライブコースである海の中道や志賀島へ車で20〜30分弱で行けて、低山ハイキングにおすすめの立花山にもサクッと行ける距離感。近所の名島海岸では潮干狩りができ、夕暮れのサンセットも見ものだとか。海も山も近いロケーションが、休日や余暇に潤いを与えると平田さんは語る。

(写真左)立花山からの眺め、(写真右)志賀島・潮見公園からの眺め

「身近な場所で自然に触れることもできるし、天神や博多にも公共交通機関を使ってサクッと行けるから、余計なストレスを感じることなく千早暮らしを楽しめています。個人的に、一つだけエリアに求めるものをあげるとしたら、気軽に飲みに行けるお店が増えたらうれしいかな。住宅地という特性のため、天神をはじめ西新、高砂、香椎などのように個人経営の飲食店が多くないんです。あ、でもたくさんあると毎日飲み歩いちゃいそうなので、今くらいの方が健康的に過ごせるかもしれませんね(笑)」

都心的かつスマートに暮らせる千早駅付近の4・5丁目と、ゆったりとした時間が流れる1〜3丁目。どちらを選んでものびのびと快適に、何不自由なく暮らせる千早エリア。家事や育児、仕事に勤しみながら、ご近所さんと交流を育んだり、天神・博多でのショッピングを楽しんだり、心潤う自然とのふれあいも満喫できる。そんな生活の彩りを、千早エリアならたくさん見つけられそうだ。

Recommend Spot in Chihaya

桜舞い散る春も楽しみ。ひっそりとした香椎川の心和む風景

■香椎川の遊歩道
住所:福岡市東区千早5〜6丁目付近(香椎駅前2丁目との境)

千早5・6丁目と香椎駅前2丁目の間を流れる香椎川。その川沿いに続く小さな遊歩道が、平田さんのおすすめスポット。静かな川の佇まいと水面に浮かぶ鴨たちの姿、一帯に植樹された緑に心癒されるのだとか。春は川沿いの桜が咲き誇り、その光景が「ちっちゃな目黒川のよう」と平田さん。ちなみに、Vol.9 福岡市東区香椎駅前2丁目編で紹介している人気のコーヒーショップ『珈琲小林』も香椎川沿いにあるので、散歩がてら訪れてみて。

I’m Here
Rond-Point(ロン・ポワン)

住所:福岡市東区千早1-9-5
TEL:092-671-4408
営業時間:9:00~19:00(土日祝は8:00~)
定休日:不定
https://www.rond-point.jp

フランスや神奈川の有名なパティスリーで腕を磨いたオーナー・平田章裕さんが営むお店。フランスの伝統レシピをベースに、新しい味と美味しさへの創造を織り交ぜながら、見た目も味わいも感動的なスイーツを手がける。人気No.1は旬のフルーツと生クリームをたっぷり使った「プレミアムショート」。そのほか「和栗のモンブラン」や南仏伝統食の「クロカント」、バラエティに富んだ華やかなロールケーキも評判。店内には朝食やおやつにぴったりのパン、贈答品にも最適な焼き菓子も豊富に並び、2階のイートインスペースでゆっくり味わうことも可能だ。

〜 エリア紹介:福岡市東区千早 〜

東区の副都心として注目を集めるベッドタウン。北に香椎、南に名島や箱崎が隣接し、福岡都市高速道路とJR九州鹿児島本線の間に広がる。広義の香椎地域に含まれることが多かったが、再開発が進み、高層マンションや商業施設の立地も増加してきたことから「千早」の認知度が著しく向上。JRと西鉄のWアクセスが可能で、築浅の集合住宅が多いことから転勤族やヤングファミリー層に人気を集める。駅周辺にはスーパーマーケットやドラッグストアが複数点在し、3号線沿いには飲食チェーン店や大型電気店、コンビニなどが充実する。

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