■塩原の台所 えぞえ
住所:福岡市南区塩原3-2-1 長沼コーポ1F
TEL:092-562-6220
営業時間:18:00~23:00
定休日:火曜
住人だからこそ知っている、塩原暮らしの豊かな魅力。
今回フォーカスするまちは、福岡市南区の「塩原(しおばる)」。西鉄大橋駅、またJR竹下駅から徒歩圏内の塩原エリアは、マンションや一軒家が建ち並ぶ住宅街の印象が強い。大橋と竹下に挟まれた塩原エリアの隠れた特性や実際の住み心地を知るために、この地にセレクトショップを構える『sum(スム)』のオーナー・石江千恵子さんから色々と話を伺ってみよう。
ご主人の“塩原愛”の後押しで、博多区古門戸から南区塩原に移転。
西鉄大橋駅とJR竹下駅の間の塩原1丁目にて、セレクトショップ『sum』を営むオーナーの石江千恵子さん。2017年に博多区古門戸町にショップを開き、住まいも店も古門戸町に構えていたが、2019年に住まいを南区塩原に移し、翌年店も同エリアに移転した。なぜ公私ともに拠点を「塩原」にしたのか、その理由を聞いてみた。
「主人の職場が塩原なんです。彼は結婚前から10年ほど塩原に住んでいて、常々『塩原はいいまちだ』と語っていました。一方の私はこの辺りの土地勘がほとんどなかったので、結婚のタイミングで住む場所をどうしようか検討したのですが、主人の“塩原愛”に押されて(笑)、私もこのまちに引っ越しました」
まずは住まいだけ塩原に移し、店は古門戸町に構えたまま、石江さんはしばらく通勤していたとか。
「古門戸町ではご近所さんたちに可愛がっていただいて、とても居心地がよく、“第二の故郷”のような場所になっていました。そんな大好きなまちから離れたくないという気持ちと、何も知らない塩原に拠点を移すことへの不安から、当初は引越しに前向きになれない時期がありましたね。住まいを塩原に移した後も店だけは移転せず、古門戸町まで通勤していましたが、コロナ禍をきっかけに店も塩原に移転することを決意しました」
天神から春日方面へとつなぐ日赤通り。右手側が塩原エリアとなる
環境が全く異なるまちへ拠点を移すことに関して、好奇心よりも不安が勝っていた石江さんに対し、ご主人は前向きな視点で塩原の魅力について教えてくれたそう。
「主人は仕事が内装業なので、建築や不動産に関して知識がある方。そんな彼が、塩原の住み心地の良さに加え、『塩原は今後も土地の価値が下がらない人気住宅地になるはず』と語っていたんですよ。確かに、2017年に西鉄大橋駅に特急列車が停まるようになり、駅に新しい商業施設が登場し、道幅も広くなったり新しい道路ができたりして、まちの利便性が上がっているなぁと実感します。あとは、主人曰く『現在も周辺の都市開発が進められているということは、この界隈に成長の伸び代がある証拠。まだまだこの先も大橋駅界隈は発展するし、歩いてすぐの塩原エリアもさらに魅力が高まると思うよ』とも。周辺環境が発展・充実しつづける中でも、塩原は住宅地として落ち着いた雰囲気を維持しているので、本当に快適に暮らせています」
塩原エリアの最寄り駅は西鉄大橋駅(写真左)とJR竹下駅(写真右)
那珂川を望む、ほのぼのとしたロケーション。行政機関や公共交通機関も充実!
塩原暮らしを始めてしばらく経つ石江さんに、徐々にわかってきた塩原のまちの特性について尋ねてみた。
「西鉄大橋駅付近は単身者がたくさん住んでいますが、それに比べて塩原エリアはファミリー層が多く住んでいますね。特に分譲マンションが多くて、我が家も分譲賃貸のマンションです。だからでしょうか、部屋の広さにゆとりがあるのはもちろん、長く住んでいらっしゃる方々が丁寧に暮らしているのが伝わり、治安面・衛生面が保たれているように感じます。そういった大きなマンションの間に、小さくてレトロなアパートや一軒家も建ち並んでいて、のんびりマイペースなムードが広がっています。ちなみに、塩原の第一印象は『静』でした。静かだけど寂しさは感じない、穏やかな『静』」
石江さんの言葉通り、塩原はファミリー向けの分譲マンションや一軒家が建ち並び、大橋駅付近に比べると静かではあるものの、平穏なムードで落ち着いて暮らせるようだ。
「那珂川が流れるロケーションも魅力的だと思います。歩道がきれいに整備され、散歩するととても気持ちがいいんです。川沿いにマンションが建っていても那珂川が流れているおかげで、視界が奥へと広がるし、空も高く感じられます。また、ジョギングやランニングをする人が老若男女問わず必ずいるので、女性ひとりで歩いていても怖くないですよ。川沿いで子供たちが楽しげに遊んでいる姿も見かけるので、そんなワンシーンにもほっこりします」
そしてもう一つ、石江さんにはまち選びで譲れないポイントがあったという。それは坂道がないこと!
「個人的に坂が苦手なので、徒歩でも自転車でも勾配がある道を避けたくて(笑)。塩原界隈はほとんど道が平坦なので快適です」
那珂川より西側が南区塩原で、川より東側は博多区竹下。塩原エリアに住むと南区役所管轄となり、塩原3丁目に区役所があることから、諸々の手続きが徒歩圏内の近所で行えてなにかと便利。福岡南警察署もあり、万が一の治安面でも心強い。また交通の便も申し分なく、JR竹下駅と西鉄大橋駅のWアクセスが可能で、空港まで車で10分ほど。「知り合いや友人から『最寄りが大橋駅っていいね』といつも言われるのですが、その意味がようやくわかりました。天神・薬院へパッと行けるから楽ちんです♪」と石江さんは語る。
新たなランドマークが近所に登場し、今後も住み心地が高まる予感…!
大橋駅から竹下駅方面に向かう道沿いは街路樹がのび、散歩が気持ちいいエリア。この並木道沿いに、緑に囲まれた小さな神社『熊野道祖(くまのどうそ)神社』がある。
西鉄大橋駅前とJR竹下駅をつなぐ並木道(塩原59号線/写真左)と、『熊野道祖神社』(写真右)
ニッチなものが好きだと語る石江さんは、「熊野道祖神社奥に『のどの神様』という小さなお参りスポットがあるんですよ。珍しい神様がひっそり佇む光景に心がくすぐられます」と微笑みながら語る。時間に余裕がある日は、通勤前や買い物前後に、塩原内の路地裏を散策することも。素敵な一軒家やマンション、表札などを眺め、想像を膨らませながら散歩し、石江さん流の“ひとり時間”を楽しんでいるそう。
最後に、住宅地の塩原内に点在する、おすすめの飲食スポットを教えてもらった。
「珈琲喫茶の『手音』は一杯仕立てのコーヒーがとってもおいしくて、大衆フレンチ『ボンジュール食堂』もコアなファンが多いです。あと、那珂川沿いにある自転車屋『正屋』の併設カフェ『5CAFE』ではランチもやっていて、個人的にはチョコチップとキャラメル&くるみのスコーンが好き。そういえば、『正屋』の並びのコンテナに、小さな花屋さんがオープンしていましたよ!あと、ご夫婦で営まれている小料理屋『塩原の台所 えぞえ』は、地域の人に愛されるお店。和食を食べたい、お魚を食べたいという日によく食べに行っています。一般的に有名なのは、塩原3丁目の『一風堂 塩原本舗』でしょうか。一風堂の創業期を支えたお店として、全国のラーメン好きがわざわざ足を運んでいるみたいですね」
2022年4月には、福岡市青果市場跡地に九州初上陸の『ららぽーと』が開業。旧青果市場の記憶を受け継ぐ「フードマルシェ」や映画館「TOHOシネマズ」、「キッザニア」「スポーツパーク」、その他アパレルショップや飲食店など、多彩な店舗が集結する、住所は塩原から徒歩15分ほどの博多区那珂6丁目。このようなランドマークの登場も、塩原の快適性や土地の価値を一層高める起因になるだろう。
「大橋や竹下と比べると塩原の認知度はまだまだ低い方。実は今でも『塩原ってどこ?』とよく聞かれます。こんなに便利で住みやすいのに、地域名が広く浸透していないまちって、逆に貴重ですよね(笑)!個人的にはそういうニッチさも好感が持てるポイントかもしれません」
「おばあさんになっても塩原でお店を続けていきたいです」と語る石江さん。開発・発展が進む周辺エリアに身を寄せて、静かにのんびり、自分のペースで歩んでいける塩原の穏やかなムード。そのほのぼのとしたリズムに心癒されながら、石江さんをはじめ、ここに住む人たちは時を刻んでいくのだろう。駅近で利便性に富んだ穴場の人気住宅地、塩原の暮らしに今後も注目していきたい。