極小エリアマガジン
福岡市城南区干隈1丁目
#26
Interview
「姪浜に次ぐ“人気ベッドタウン”に!? 干隈エリアの未来予想図。」
『ほしくま酒店』 店主・岩永和樹さん

姪浜に次ぐ“人気ベッドタウン”に!? 干隈エリアの未来予想図。

今回クローズアップするのは、福岡市城南区と早良区にまたがる干隈(ほしくま)エリア。脇山口から野芥までを繋ぐ「早良街道(さわらかいどう)」沿いには商業施設や飲食店などで賑わいながらも、大通りから一本入ると閑静な住宅街が広がり、昔から暮らす地元住民が多い印象だ。この干隈エリアの住み心地や、まちに期待できる部分はどんなところだろう。城南区干隈1丁目に店を構える『ほしくま酒店』の2代目店主・岩永和樹さんから、住民目線で話を伺った。

アクセス性の円滑化により、暮らしの利便性が向上した干隈エリア。

お父様の酒屋開業を機に、小学校5年の頃に干隈へ引っ越してきたと語る岩永さん。オープン当初はアニメ「サザエさん」に出てくる三河屋さん(酒屋さん)のように、近所のお客様の自宅へビール配達に行くような“まちの酒屋さん”だったとか。

『ほしくま酒店』の外観。現在は飲食店への卸業を主軸にしながら、店舗での販売も行っている

「オープンした1986年頃の干隈エリアを振り返ってみると、ファミリー層が住む一軒家が多かったのではないかと思います。今もその名残はありますが、転勤族が多い西新に比べてこの界隈は昔から住んでいる地元の方が多いですね。2005年以降に開通した地下鉄七隈線や都市高速道路のおかげで交通の便が良くなり、徐々に移住者が増え、一軒家だけでなくファミリー向けのマンションも増えてきたように感じます」

岩永さんが営む『ほしくま酒店』は干隈1丁目にあり、城南区干隈の中では北側に位置することから地下鉄七隈駅が最寄り駅になる。それに対し、南側に位置する干隈2丁目の住民は、徒歩5分圏内の地下鉄野芥駅が最寄りとなり、干隈の中でも利用する駅が異なる様子。

『ほしくま酒店』から徒歩約11分で到着する地下鉄七隈駅

「天神方面に行く際に、地下鉄をよく利用します。バスで行くこともできますが、地下鉄は渋滞の影響がなく、時間通りに行き来ができるから快適ですよね。また、2012年に近所に都市高速出入口(野芥)ができたことも、生活の利便性を高める要素になったと実感しています。福岡空港まで最短20分ほどで到着するので遠出の際に大助かり。我が家は、毎週糸島の産直所へ買い物に出かけるので、西方面も高速道路を使えばあっという間。糸島半島の中央にある『志摩の四季』や、二丈の『福ふくの里』までも、都市高速道路と西九州自動車道を利用すれば30分程度で行けますよ」

干隈三差路の交差点から延びる福大通り

『ほしくま酒店』の目の前には、干隈三差路交差点から城南区片江1丁目交差点までの東西を繋ぐ「福大通り」が通っている。この道幅も岩隈さんの少年期と比べて広くなり、歩道もできたことから住民みんなが安心して歩ける環境になった。なお、福大通りは東へまっすぐ進むと南区の大池通り、そして高宮駅付近へ到達し、その先はきよみ通り、福岡空港国際線入口へと繋がる。

ちなみに、干隈エリアは早良街道を境に「城南区干隈1・2丁目」と「早良区干隈3〜6丁目」に分かれ、早良街道から東側が城南区で、西側が早良区となる。面白いのが、同じ干隈でも東西でまちの雰囲気が異なるところ。東側の城南区干隈は住宅街でありながらも福大通りに飲食店やクリニック、スーパーなどの路面店が点在していることから、比較的賑やかな空気感が広がっている。一方、西側の早良区干隈は、星の原団地に囲まれるように一軒家やアパートが建ち並び、田んぼも点在するなど静かでのんびりとした雰囲気。双方それぞれのカラーを持ちつつも、早良街道沿いには長く続く老舗飲食店や建設中のマンションがあり、今後もまちの成長が期待される。

早良街道(写真左)と、早良区干隈の閑静な住宅街(写真右)

干隈らしさとは?地元目線で気づいた“昔から変わらないもの”。

地下鉄や都市高速道路の開通により、劇的に生活の利便性が上がった干隈エリア。道路が整備され、新しい店が増えるなど、まちの景色が少しずつ変化する中でも色褪せることのない“干隈らしさ”があるはずだ。それはどんなところか、岩永さんに尋ねてみた。

「僕の中で印象的なのは、油山の景色でしょうか。小学生時代に野球をやっていたのですが、『油山の輪郭がはっきり見えたら今日は晴れ、霞んで見えたら雨が降るかも』と言って、グラウンドからいつも油山を眺めていましたね。大人になってもこの景色はあの頃のままで、今も油山をふいに眺めては『今日は空気が澄んでいるね』『あれ、黄砂が強いかな?』など、山の色合いや輪郭を観察しながら生活しています」

岩永さんが子供の頃から眺めている油山の景色(熊添池より)

また干隈エリアの住民には、「西南杜の湖畔公園」の存在も大きいと語る。

「『西南杜の湖畔公園』はもともと1960年代から西南学院大学の専用グラウンドとして使用されていた場所です。都市開発の関係で1999年に福岡市に譲渡され、2003年に公園として大規模リニューアル。現在のように遊歩道や芝生広場、遊具施設を完備した多目的広場ができました。名称も西南学院大学の由来を感じさせますよね。コロナ禍前は、体育祭シーズンになると応援団の練習音が公園から聞こえてきたりして、中学生が頑張っているなぁと微笑ましく感じたものです」

のんびりとした湖畔の風景

広大な敷地には熊添池、熊本池、若宮池の3つの池があり、外周の遊歩道は散歩コースやジョギングコースになっている。樹林や竹林もきれいに整備され、春から夏にかけては緑がすがすがしく、秋は紅葉が美しく染まり、散策したり、木の実を拾ったり、リフレッシュしたりするにも絶好の場所。

ピクニックに最適な芝生広場

春になると芝生広場は桜の名所となり、多くの見物客が花見を楽しむ。また公園内には大きな球技場や野球場、テニスコートも完備され、週末は球技場やテニスコートでさまざまな大会が繰り広げられて活気に満ち溢れる。

多目的広場はファミリーの遊び場にもなっていて、キャッチボールを楽しむ親子や、犬の散歩をする人の姿が見られ、岩永さんも子供の自転車の練習や昆虫採集でたびたび訪れた思い出があるという。「西南杜の湖畔公園は、僕らにとっては大濠公園と同じくらい癒される場所ですね」とニッコリ。

子供たちが「汽車ぽっぽ公園」と呼ぶ遊具を備えた自由広場

活気に満ちた新しいベッドタウンに!? 干隈の未来予想図を探る。

早良街道と福大通りをメインに、飲食店やスーパー、コンビニ、病院、郵便局、銀行、携帯電話ショップなど、生活に必要なものが揃っている干隈エリア。行列ができるお店が多いのも地域の特筆ポイントだと岩永さんは語る。

「うちの隣にある『珈琲童子 珈童 福大通り店』は、コーヒーが美味しくて空間の雰囲気も良く、午前中から人の出入りが多くて大人気。今では珍しい“店内喫煙可”とあって、愛煙家の貴重な休憩スポットにもなっているようですよ。私たちもギフト用のコーヒー豆をよく購入しています。斜め向かいの居酒屋『旭家』は宮崎県産の地鶏料理が絶品で、店主の人柄も厚く、地域の人々に愛される集い場です。また、近所の『たにざき皮フ科クリニック』は“名医がいる皮フ科”として有名で、九州中から多くの人が訪れています。ちなみに、住所は城南区七隈になりますが、うちから徒歩約5分の場所に『PATISSERIE S.B.C』という人気のケーキショップもあり、その先には『タカサキハンバーグ』という行列ができる店も!」

『珈琲童子 珈童 福大通り店』(写真左)、『PATISSERIE S.B.C』(写真右)

最近では、七隈を中心に展開している「花みずき通り商店会プレミアム付き地域振興券」が干隈でも一部使えるようになり、『ほしくま酒店』も加盟している。昨年は野芥商工連盟会によるプレミアム付き商品券も別途販売され、早良街道沿いの店舗で多く利用されていたようだ。

「1万円で購入したチケットが1万2000円分の商品券となるもので、これを使ってご近所さんがお酒を買いに来られる機会が格段に増えましたね。普段は飲食店への卸業がメインなので、昔のようにご近所さんにビール配達をする機会がないのですが、この地域振興券が近隣住民の方との縁を結ぶきっかけになり、地元の方と新しい繋がりも生まれて嬉しく思っています!」

人気のあまり即完売となった「花みずき通り商店会プレミアム付き地域振興券」

岩永さんへの最後の質問に、干隈エリアの未来予想図をどんな風に描いているか尋ねてみた。

「地下鉄七隈線の延伸事業が2022年度に開業される予定です。西区の橋本駅から博多区の博多駅まで直結することで今まで以上に利便性が上がりますし、博多駅で空港線に乗り継げば福岡空港までスムーズに行き来することが可能。天神・博多への回遊性がさらに高まるので、転勤族や別エリアに住んでいる人の新しい住処として干隈エリアが選ばれるようになるのではないでしょうか!?」

「個人的な予想としては、単身赴任者向けのマンションなど法人による借り上げ社宅が増えそうな予感。今の西新や姪浜のように、“地下鉄で博多駅まで一本!”の需要が干隈エリアにも見込めます。人の行き来が活発になることで新しいお店も増え、まち全体が盛り上がり、風通しもよくなるはず。今とは違った景色が見えてくるのではないかと非常に期待していますし、そんな未来の干隈エリアを僕たちも楽しみにしています!」

福岡市地下鉄七隈線延伸事業により生活の快適化が進み、地域全体がさらに活性化するであろう干隈エリア。住みやすさに比例して地価も上がっていくことが予想されるので、賃貸マンションオーナーにとっても注目のエリアとなるのではないだろうか。今後もまちの成長が加速しそうな干隈エリアに、近隣住民をはじめ、地域外の多くの人々からも熱い視線が注がれる。

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干隈っ子の憩いの場所。大きな湖畔を眺めながら森林浴を楽しんで。

■西南杜の湖畔公園
住所:福岡市城南区干隈2丁目〜城南区七隈6丁目
TEL:092-863-7929(西南杜の湖畔公園管理事務所)
http://seinanmori.q-rin.co.jp/

西南杜の湖畔公園は、湖と緑に囲まれた大きな公園。まちの賑やかさから一転、園内に入ると雄大な自然に囲まれ、清々しさに包まれる癒しの世界へと切り替わる。約19万㎡の敷地には、3つの池と外周の遊歩道のほか、5つの広場、野球場、球技場、テニス場も完備され、四季折々の樹木や野鳥を眺めることも利用者の楽しみの一つ。岩永さんも親子でよく訪れた思い出があるとのことで、いつ訪れてもその頃を懐かしめる変わらない景色が広がっている。

I’m Here
ほしくま酒店

住所:福岡市城南区干隈1-17-9
TEL:092-865-3343
営業時間:9:00~19:00(日祝日は10:00~17:00)
定休日:不定
https://www.hoshikuma.jp

1986年創業、現在は岩永和樹さんが2代目店主として切り盛りする酒店。全国から選りすぐった日本酒や焼酎のほか、オーストリアでワインの醸造を学んだ経験とコネクションを活かし、ワイン発祥の地・ジョージアの最高品質ワインを仕入れているのも魅力。こだわりの品揃えと目利きのセレクトが評判を集め、現在は飲食店への卸とともに試飲会や勉強会なども開催。店舗には遠方からわざわざ訪れる辛党も多く、「岩永さんのおすすめ」を尋ねながらとっておきの一本を選び出す姿が見られる。

〜 エリア紹介:福岡市城南区干隈 〜

福岡市城南区と早良区にまたがる地域で、干隈1・2丁目が城南区、3〜6丁目が早良区で構成される住宅地。エリアの中央に早良街道が通り、その通り沿いに商店や飲食店、病院などが連なり、住民の生活を支えている。鉄道は地区内に通っていないが徒歩5〜15分ほどの場所に地下鉄七隈駅と野芥駅があり、通勤・通学の移動手段を担う。現在、2022年度の開業をめざして地下鉄七隈線延伸事業が進められており、延伸線はキャナルシティ博多付近を通り、博多駅まで伸びるとあって、これまで以上にアクセス性が高まる見込み。干隈エリアの南側には福岡外環状道路(早良区側の南端にてわずかに接する)が通り、都市高速道路も含め、車を利用する際も便利なロケーション。

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