住所:糟屋郡志免町別府2-98-2
空港横のベッドタウン。志免町別府は子育て世帯の人気エリア!
福岡県西部に位置し、福岡市に隣接する糟屋郡志免(しめ)町。江戸時代から昭和にかけて炭鉱業で栄えたことから、“炭鉱の町”を表す建物や商品が数多く残っている。今回はそんな志免町の中で、“ふくおか志免ブランド”第一号に認定されたスイーツを作る西洋菓子『Rothen Burg(ローテンブルグ)』のオーナー・三苫信胤(みとま のぶたね)さんにインタビュー。「志免町別府(べふ)」に焦点を当て、まちの魅力や住み心地について伺ってみよう。
好立地な別府を拠点に! 利便性と快適性を実感。
今から25年前。三苫さんがパティシエを目指し上京したタイミングで、お父様の信一さんが志免町別府に西洋菓子店『ローテンブルグ』を開いた。
「父は長年博多の有名ホテルで製菓料理長を務めていて、自宅の太宰府から県道68号線を使ってマイカー通勤していたんです。毎日別府界隈を通り、独立するならこの場所がいいなと思ったんでしょうね。僕も子供の頃、車の中からこの通りを眺めていたので何となく雰囲気は覚えていて、当時父から別府に店を開くと聞いた時は『あぁ、あの場所に』と反応しましたね」
三苫さんは上京後、東京や神奈川、オーストリアに渡りパティシエとして腕を磨き、父の店『ローテンブルグ』を引き継ぐため20年前に帰郷。住まいも太宰府市から志免町別府に移した。幼い頃に車窓から眺めていたまちに実際住んでみて、どう感じたか率直な感想を尋ねてみた。
「想像以上に住みやすいまちだなと感じましたよ。とにかく立地がいいですね。空港に近い別府2丁目なら福岡空港まで車で5〜6分ですし、徒歩でも行ける距離。コロナ禍になる前は他県やアジア方面へ出張に行くことがたまにあり、また関東出身の妻も里帰りの際に空港を利用するので、夫婦共々アクセスの良さを体感していました。さらに、空港まで行けば地下鉄でさらに博多、天神、六本松、姪浜など西方面などにもスムーズに行けるのでとても便利です」
「あと、空港が近いのに意外と騒音が気にならないんです。空港の真横に位置していて飛行機が真上を通らないからでしょうか。思った以上に静かでびっくりしました。これも住みやすさのポイントですね!」
三苫さんが語るように、別府が空港東側のベッドタウンとして人気を誇る理由は“アクセス性”と“閑静な環境”にあるのだろう。そして県道の大通りには飲食店やディスカウントスーパー、レジャー施設が並び、“まち”の要素も適度に備えていることから生活の利便性がとても高い。子育て世帯がたくさん移り住むのも納得だ。
“炭鉱の町”の歴史を伝えるための取り組みも多々。
志免町は今でこそベッドタウンの印象が強いが、戦前は海軍採炭所、戦後は旧国鉄の志免鉱業所があり、蒸気機関車などの燃料供給を支える“炭鉱の町”として栄えた。そんな歴史を今に伝えるのが、志免町のシンボルとなっている「旧志免鉱業所竪坑櫓(きゅうしめこうぎょうしょたてこうやぐら)」だ。国の重要文化財に認定され、カメラを片手に見物しに訪れる人の姿もちらほら。
もちろん別府にも“炭鉱の町”の名残を感じられる場所がある。それは「勝田線」という今は廃線になった鉄道路線の跡地。かつては周辺の炭田から産出される石炭や宇美八幡宮への参拝客を輸送するために列車が通っていたそうだ。そんな勝田線跡が遊歩道に変わり、近隣住民の散歩コースとなっている。
(写真左)旧志免鉱業所竪坑櫓は現在、保存修理工事が行われている
(写真右)店の裏手にある勝田線跡の遊歩道。「上亀山駅跡公園」へとつながる
「勝田線跡の遊歩道は約10kmとロングコース。僕は店裏の遊歩道をさくっと散歩してリフレッシュしています。木々や花がきれいな緑道になっていて、ちょっと行くと田園風景が広がり、のんびりとした雰囲気に。田んぼの脇道に毎年9月頃彼岸花が咲き誇るのですが、その光景がとても美しくて心が癒されます。残暑から秋に切り替わる際の、僕のささやかな楽しみですね。」
また、10年ほど前に「旧志免鉱業所竪坑櫓」保存運動の一環として立ち上げられたのが、志免町商工会による“志免ブランド”発信プロジェクト。三苫さんはスイーツの商品開発で関わり、“志免ブランド”第一号となるロールケーキ『しめ巻き』を販売して当時話題に! 竪坑櫓をモチーフにした『TATEKOUサブレ』も、人気商品として地域の人々に愛され続けている。
『TATEKOUサブレ』を通して若い世代や県外の人々に“炭鉱の町”の歴史を伝える
「志免町商工会は情報発信や経営者のサポートを積極的に行っていて、祭りの主催やプレミアム商品券の発行なども行っています。行政も含めて色々な取り組みが展開されているので、私たち住民も楽しく快適に過ごせるのだと思います」
県道68号線に店が集まり、マンモス小学校の存在もまちを元気に!
三苫さんのお店がある別府1丁目は、県道68号線を飲食店やクリニックが建ち並んでいる。2・4丁目は古くからある一軒家が多く、3丁目には新しいマンションや外食チェーン店が複数集まる。近くの「ユニバ通り」は道が整備され、博多の森陸上競技場や東平尾公園までゆっくり散歩するのも気持ちがよさそうだ。三苫さんは宇美川沿いを通勤路にし、川にいるカモやシラサギを見ながら出勤しているとか。
地域との繋がりを大事にしたいと語る三苫さん。中学校からの依頼でパティシエの仕事の紹介をする「社会人講話」を担当したり、職場体験の場として生徒たちを受け入れたり、子供たちの未来を築く何かのきっかけになればと地域の教育のために協力している。
ところで、志免町がある糟屋郡は「日本で一番人口の多い郡」と言われている。その中で志免町は、人口が約4万6千人と多く、福岡県下では福岡市を除き春日市、大野城市、北九州市小倉北区に次いで人口密度が高い。「店の斜め向かいにある志免西小学校は全校生徒数が約1200人もいるんです。1学年に6クラスあるほどのマンモス校で、他校の生徒数の倍近くあるんじゃないかな。うちの娘も通っていましたが、運動会の組体操なんかは大迫力でしたよ!」
立地や環境がいいことから子育て世帯が移り住み、年々生徒数の数が伸びてきているので今後もますます賑やかになりそうだ。最後に、「新たに移住する人に向けて、おすすめのお店を紹介するなら!?」と三苫さんに尋ねてみた。
「近所の酒屋さん『酒のひさや』は品揃えがよくて自宅用から贈答用までいろんなシーンで利用できます。うちもひさやさんのお酒を使ってバレンタイン用のチョコレートを毎年作っていますよ。あと県道沿いのラーメン屋さん『いっちょいっちょ』は地元の『富士正(ふじまさ)醤油醸造元』の醤油を使っているので、別府らしさを味わえるのでは!? 県道68号線沿いは飲食店が多く、別府の商業を支える大動脈です。行き先に迷ったら県道68号線に出てみるといいですよ」
三苫さんが語るように、県道沿いに生活に関わる飲食店やサービス店、施設が集まり、まちに根ざしながら営みを続けている。空港や博多まで行ける路線バスをはじめ、福祉巡回バスも町内を行き来し、郊外でありながら車がなくても生活できる環境。小学校や保育園など児童施設が複数点在し、安心して子育てができるし、地域の子供達の成長をそばで見守るのも心が和みそうだ。適度に田舎で、適度にまち。そんな別府の暮らしは健やかで快適だろうなと生活イメージが鮮明になった。