極小エリアマガジン
福津市渡
#14
Interview
「大自然に身を置き、いきいきと暮らす福津市渡のスローライフ。」
『A.PUTEC FLEGO』 オーナー シルビオ・カラナンテさん・花田愛さん夫妻

大自然に身を置き、いきいきと暮らす福津市渡のスローライフ。

福岡市と北九州市の中間地点にある福津市と言えば、光の道で有名な『宮地嶽神社』や、世界文化遺産「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」(新原・奴山古墳群)を思い浮かべる人が多いのでは。今回クローズアップするのは、のどかな田園地帯や海岸を大パノラマで一望できる渡(わたり)エリア。ここで農園レストラン『A.PUTEC FLEGO(アプテカ フレーゴ)』を営むシルビオさん・愛さん夫妻に、渡エリア独自の魅力を伺った。

イタリア・ナポリ出身のご主人。初めて訪れた福津市・渡についてどう感じた!?

福津市津屋崎出身の花田愛さんは、イタリア滞在中に料理人のシルビオ・カラナンテさんと出会い、現地にて結婚した。その後しばらくイタリアで暮らしていたが、夫婦で一緒に“食”に関する新しいことを始めようと、2007年にご主人を連れて福津市へUターン。

愛さん:「主人はイタリア南部のナポリ出身。実はナポリは渡半島の海岸や福間海岸、大島辺りの雰囲気にちょっと近いところがあるんです。主人もきっとこの地域を気に入ってくれるだろうなと思いました。実際にスムーズに引っ越すことができて、主人の仕事も順調に決まり、トントン拍子でしたね」

シルビオさん:「初めて訪れた時、自然に囲まれた素晴らしい場所だなと感じました。海も山もすぐそばにあって、海の美しさが僕の故郷・ナポリと似ています。あと、電車を使えば30分で博多駅に行けて、この住みよい環境は外国人なら誰でも魅力的に感じると思いますよ」

店から徒歩圏内の場所にある白石浜海水浴場

移住後に福岡市内のレストランに勤め、シェフとして活躍していたシルビオさん。当時はイタリア野菜をつくる生産者がほとんどおらず、料理人のシルビオさんにとってはもどかしい日々だったとか。なぜならナポリ人は、イタリアの中でも野菜好きとして有名。「こっちで手に入らないのなら自分たちでイタリア野菜を育てよう」と一大決心! 近所の生産者に協力してもらい、まずは4種類の野菜づくりから着手。こうして、シルビオさん・愛さんの農家暮らしが始まった。

現在はレストランを構える渡エリアをはじめ、福津市内に複数の農園を持つ

慣れないながらも農業に奮闘する二人を見て「がんばって!」と声をかけ、温かくサポートする生産者が渡エリアにはたくさんいた。

愛さん:「昔から代々継がれている漁師さんや農家さんが大勢いらっしゃって、気さくでオープンマインドな方ばかり。普段からみんなで助け合っていて、本当に温かな集落だなと思います」

シルビオさん:「『はじめまして』の時からみんな優しくて、土のことやビニールハウスのノウハウ、有機栽培のコツなど色々教えてくれました。その後も空いている畑を貸してもらったり、困った時はアドバイスをもらったり、人に恵まれているなと実感します」

渡エリアで見つけた古民家で、念願のファーマーズレストランをオープン!

自社農園『Tenuta campi flegrei(テヌータ・カンピ・フレグレイ)農園』で無農薬・減農薬のイタリア野菜をつくり始めて、今年で11年目。4種類からスタートした野菜づくりが今では80種類に上るというからすごい!

愛さん:「3年前までは野菜の直売所だけだったので、自分たちが育てたイタリア野菜の楽しみ方をお皿の上で提案できたらなと思いました。そんなファーマーズレストランがイタリアにはたくさんあるんですよ」

シルビオさん・愛さん夫妻はファーマーズレストランを開くために福津市内の物件をあちこち探し、その中で一目惚れしたのが、渡エリアのこの古民家だった。もともとは農業夫妻の住居だったそうで、築50年近くの一軒家と倉庫、さらに小さな畑付きの物件。シルビオさん・愛さん夫妻も同じ農家としてシンパシーと縁を感じ、この場所を引き継ぎたいという思いが込み上げてきたそう。

古民家をリノベーションして、2017年にファーマーズレストラン『A.PUTEC FLEGO』をオープン!

建主や建築年月日などを記した上棟時の棟札。立派な梁とともに歴史を刻んでいる

ちなみに、イタリア野菜がつくられるナポリ近郊の畑は火山性土壌だが、渡エリアも肥料を吸収しやすい土質で野菜づくりに最適な土地。「むしろこっちの方が野菜の旨味が凝縮して、おいしく育っているよ!」とシルビオさん。これまで4度ほどナポリからご家族が来日したそうだが、野菜好きのお母様も太鼓判を押したほど、いきいきとした野菜が着実に育っている。「農園もレストランも、真心を込めて一生懸命手がけることが僕らのポリシーです」とにっこり。

自然と共存する心地いい暮らし。海外に誇れるライフクオリティーの高さ。

海外からの移住者であるシルビオさんに、故郷の友人たちに渡エリアについてどう語っているのか聞いてみた。

シルビオさん:「イタリアの友達には、渡エリアは自然溢れる場所で、元気いっぱいの野菜とおいしい魚に恵まれた土地だよと紹介しています」

愛さん:「やっぱり渡エリアの一番の魅力は豊かな自然ですよね。山と海が近くて本当に気持ちがいい。私たちはもう当たり前になっていますが、市街地から来られる方々は、ここ一帯に入ると潮風を感じるとおっしゃっています。店の裏手に白石浜海水浴場があり、私たちもお気に入りのスポットです」

特に印象的だったのが、「渡エリアにいると自然が主体であることに気づかされる」という愛さんの言葉。人間は自然の一部であり、私たちは自然の中に住まわせてもらっていると自覚するのだそう。「有機栽培を始めてから強く感じるようになりました。四季折々の変化をよりはっきりと肌で感じますし、母なる大地に圧倒されます。また、この地域は手つかずの自然がたくさん残っているから、そう感じる瞬間が多いのかも」と語る。

店裏の小山にある「森神社」

愛さん:「早朝は朝露で空気が澄み渡り、ゆっくりと朝日がのぼり、すがすがしさで満たされます。そして車の通りが少ないのでとっても静か。風の音や虫の鳴き声など、五感が冴え渡って心地いいですよ。あと、近くの小山にある『森神社』も神秘的。長い階段を登った先に本殿が建つのですが、うっそうとした森の景色を身近に楽しめます」

シルビオさん:「若い世代の新しいお店が増えてほしいなと思う一方、ほっとリラックスできる雄大なロケーションは維持されてほしい。とにかく空気がきれいで、ちょっと足を伸ばせば街のにぎわいを楽しめる。こんなにライフクオリティーが高い場所、なかなかないよ!」

幅広い年齢層が渡エリアを訪れる理由は、シルビオさん・愛さん夫妻のファーマーズレストランのほか、心安らぐ豊かな自然に引き寄せられるからかもしれない。広大な田園風景と海岸の景色を眺め、ゆっくりと深呼吸しながら渡エリアを後にする際、その予感はしっかりと確信に変わった。

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■白石浜海水浴場
住所:福津市渡
海水浴場開放時期:7〜8月(それ以外の期間は遊泳禁止)

ファーマーズレストラン『A.PUTEC FLEGO』から徒歩圏内の白石浜海水浴場。約1.6km続く砂浜は粒子が細かく、砂の上を歩くと「キュッキュッ」と音がする“鳴き砂”として有名。海の透明度が高く、毎年7~8月は海水浴場として開放される。シルビオさん・愛さん夫妻も気分転換にふらっと訪れてリフレッシュしているそう。

I’m Here
A.PUTEC FLEGO(アプテカ フレーゴ)

住所:福津市渡153
TEL:0940-39-3659
営業時間:ランチ11:30~14:30(L.O.14:00)、カフェ14:30〜17:00、金・土のみディナー18:00〜22:00(L.O.21:00)
定休日:月曜、第1火曜
Facebook:「Tenuta Campi Flegrei」で検索

イタリア語で「何でも揃う」という意味のイタリアン八百屋『A.PPUTEC(アプテカ)』と、ファーマーズレストラン『FLEGO(フレーゴ)』を合体させたお店。自然豊かな環境の中、新鮮なイタリア野菜をたっぷり使用した窯焼きピッツァやプレート料理を味わえ、体の中から元気になれる場所。併設の直売所では、オーナー夫妻が手塩にかけて育てた有機栽培のイタリア野菜を中心に、自家製トマトソースやイタリア産のオリーブオイルなども展開している。

〜 エリア紹介:福津市渡 〜

福岡市と北九州市の中間に位置する福津市にて、玄界灘に囲まれた北西部の半島が「渡(わたり)」。内陸部のほとんどが田園地帯となっており、農業を営む住民が多数。海の透明度が高く、恋の浦海岸と白石浜海水浴場の2つのビーチが広がる。また、恋の浦ダイビングスポットもダイバーの間で人気。買い物や飲食に便利な津屋崎・福間エリアは、車で5〜10分ほどの距離。福津市ではここ数年で若いファミリー層が増え、積極的にまちづくりが行われている。

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