■成竹山(なるたけやま)
住所:那珂川市大字成竹
標高:約580m
「多彩な有志が集結し、盛り上がりを見せる那珂川の「リアル」。」
新幹線の車両基地があり、新幹線を使って300円で博多駅まで行き来できることから全国的に話題を集める那珂川市。2018年に町から市へと昇格後、まちの勢いも知名度もぐんぐん上がっている。その背景には地域住民の熱い思いと結束力があり、「那珂川市を盛り上げよう」と現在も続々と企画が進行中。今回は、駅から徒歩15分ほどの場所にある、那珂川市中原5丁目に店を構える牛嶋裕介さんにインタビュー!牛嶋さんの経験談をもとに那珂川に対する第一印象や、自身の変化、地域おこしの取り組み、まちの成長について掘りさげたい。

ハンバーガーショップ店主が語る、地元愛のビフォー・アフター物語。

博多南駅から南へまっすぐ向かった場所にある、那珂川市中原5丁目にてハンバーガーショップを営む『SUNRISE』オーナーの牛嶋さんは、学生時代に福岡市内から那珂川市(当時は那珂川町)に越してきたという。今でこそ駅周辺が栄え、市街化したものの、20数年前は見渡す限り田んぼと山と住宅地だったとか。「当時の僕は那珂川ってどこ?という状態。福岡市から見ると田舎だと感じていましたね」と昔の印象を振り返る。
さらに牛嶋さんの本音トークから、ちょっぴりショッキングな言葉が飛び出した…!
「正直なところ、昔は那珂川がキライでした(苦笑)。田舎特有の閉鎖感みたいなものが嫌で、地元にそっぽを向いて他のエリアで遊んでいましたね。でもね、今は違いますよ!!!周りに30〜40代の愉快な仲間が増え、以前に比べるとオープンな空気感になっていますし、僕自身も変わりました(笑)」

1990年に博多南駅が開設し、中原2丁目の駅前ビルを中心に飲食店や大型店が増加。さらに町から市への昇格を目指して地域全体が一致団結!さまざまな取り組みやまちおこしのイベントが行われ、2015年の国勢調査で町内人口が5万人を突破。2018年、ついに「筑紫郡那珂川町」から「那珂川市」へ!
そんなまちの成長とともに、牛嶋さんの心境も変化していった。

牛嶋さんは2012年に食肉卸業を開業。それまで勤めていた中古車販売業に比べると、食肉の加工・卸業は同業者や一定の取引先としか関わりがなく、新たな出会いも、他の世界を知る機会もほとんどなかったという。次第に「もっと面白いことをやりたい!」という思いが湧き、本業の傍ら、グルメバーガー専門店『SUNRISE』を開くことを決心。時にはここ中原5丁目を飛び出して、地域の祭りや知り合いのイベントに出店し、少しずつ広範囲に顔が知られるように。そんなある日、イベントで那珂川の地域おこしのメンバーと出会い、牛嶋さんはターニングポイントを迎える……。
地元ギライから考えが一変!「地域貢献」への思いが芽生えた。
牛嶋さんに一番影響を与えたのは、「コト」を動かし「バ」をうみだすまちづくりの拠点『こととば那珂川』のメンバーたち。最初に出会ったのは、『こととば那珂川』の主要人物であり、同じ駅前ビルで『cafe Ruruq(るるん)』を切り盛りする店主・坂口麻衣子さん。彼女はまちづくりコーディネーターとして活躍し、人と人、人とこと、人とものを繋げてくれる存在だ。

『cafeRuruq』の店主・坂口さん(写真左)はさまざまな出会いや接点をもたらしてくれる人
「以前の僕は、地元密着という考えがなくて、好きな人が来てくれたらいいやくらいに捉えていました。でも、『こととば那珂川』を通して出会った人たちは他県からの移住者やUターンしてきた人も多数いて、フラットに話せる人ばかり。そんな彼らが自分の拠点だけでなくまち全体のことを考え、『地域の人たちと一緒に、みんなの力で那珂川を盛り上げよう』と語る思いや、そこから垣間見える大事にすべき本質を目の当たりにしました。また糸島ブームの火付け役『SUNSET』のオーナーからも大きな学びがありました。『地元に人を呼ぶためには地域と繋がることが大事。地域貢献がまちや人を成長させる』とね。だんだん自分の中で価値観が変わり、次第に、那珂川で自分にできることは何だろう?と考えるようになったんです」

坂口さんが幹事を務める夜会にて。毎月15日に行われ、自由参加のウェルカムなムード

JR博多南駅前ビル『ナカイチ』は中原2丁目に建つ。『Ruruq』をはじめ、飲食店やビアガーデン、ワークスペースなどが入居し、屋外の広場では祭りやイベントも行われる
新たな出会い、尊敬すべき人々から得た気づき。それによって視野が広がり、義理人情や地域貢献に目覚めた牛嶋さん。「那珂川のガイド役になれるように」と、自分の殻を破り、まち全体に目を向け始めた。苦手だった集まりごとに顔を出し、いろんなお店に立ち寄り、それぞれの店主との関係性を築きながら人脈を広げていった。今では、那珂川について1つ尋ねれば10以上返ってくるほど、まちの情報や魅力についてたくさん教えてくれるアニキ的キャラクターに。
那珂川自慢。それは個性豊かな人材と、まちと自然の距離感。
「今、那珂川にはすごい人が集まっているんです」と牛嶋さんは語る。

「那珂川から世界に!と志高く活動している人がたくさんいます。例えば同じ中原5丁目にある、うちの隣の食パン専門店『大名商店』は、連日行列を作る人気店!また、ここから車で10分ほど行った場所にあるラーメン屋『nakamuLab.(ナカムラボ)』は、住宅街に潜む完全予約制の隠れ家ですが全国的に有名です。あと国内外で話題を集め、“焼士(やきし)”としてグローバルに羽ばたく陶芸家・古賀崇洋さんもアトリエを市内に構えています。もっと山間部にいくと、南畑にハンドメイドジュエリーのアトリエ『THREETREES(スリーツリーズ)』もあったりして、那珂川には面白い人たちが集まっているな〜と感じるとともに、いい刺激を受けますね。僕も『SUNRISE』を通して、今後も多くの人を中原に呼べるように頑張っていきたいと思います!」
那珂川で一目置かれる人々の業種は多岐に渡り、飲食業の店主や陶芸家以外にも、農業の生産者や建築家など多種多様。それぞれの個性ももちろん光るが、そういった人々がコラボレーションして交わることで、まちの盛り上がりがますます加熱する。その代表例が、博多南駅前ビルの屋上にある『博多南ナチュラルビア&オイスターガーデン』。地元の生産者から新鮮な野菜や肉を仕入れ、那珂川の恵みを一通り堪能できることから、地域住民から市外・県外の人まで幅広く喜ばれている。

『nakamuLab.』の店主・中村さん、『博多南ナチュラルビア&オイスターガーデン』の代表・坂口さんらともイベントでコラボ!

『cafeRuruq』の軒先には産直コーナーがあり、“那珂川メイド”を発信している
最後に、牛嶋さんは自然豊かなロケーションも那珂川自慢のポイントだと語る。
「僕自身、あちこち外に出かけたい派なのですが、那珂川市は絶好の遊び場!那珂川の上流の中洲を活かした『中ノ島公園』で川遊びをしたり、『グリーンピアなかがわ』や『モンベル五ケ山ベースキャンプ』でアウトドアを楽しんだり、子どもと一緒に『成竹山』を登ったり…。そうそう、那珂川は山登りの聖地ですよ!初心者も登れる低山の観音山や石割山、岩門城跡、さらに南区や大野城の境にも絶好の登山スポットがあります。今度僕がガイドしましょうか(笑)!?」

中原1〜7丁目の駅周辺を中心にした市街地と、都会の喧騒から離れてゆったり静かに過ごせる山間部。「那珂川には注目を集める店や世界的アーティスト、旬の食材を届けてくれる生産者が大勢います。そして自然がすぐそばにあり、地産地消を楽しめる。外に向けて自慢したいまちです!」と牛嶋さん。これからも市の人口増加とともにまちの新たな取り組みや、キーマン同士のユニークな企画など、さまざまな展開が期待される。「那珂川、面白いじゃん!」、そんな声が各所で飛び交うことになりそうだ。
