極小エリアマガジン
福岡市南区大橋1丁目
#1
Interview
「街の変化に寄り添う、大橋の暮らし」
セレクトショップ『organ』オーナー 武末充敏さん・朋子さん夫妻

街の変化に寄り添う、大橋の暮らし。

大橋駅が高架駅になる前から、かれこれ30年近く大橋に住んでいるセレクトショップ『organ』のオーナー・武末充敏さん。当時の街並みを知る張本人であり、長年に渡りこの一帯を見守り続けている、大橋ではお馴染みの存在だ。そんな充敏さんと奥様の朋子さんに、大橋の昔と今で変わったこと、一方で変わらないもの、そしてこの街の魅力について話を伺った。

大橋が地元の充敏さん、大橋へ移り住んだ朋子さん。

『organ』は、大橋駅西口からすぐの場所にあり、オーナーの充敏さんは中学時代からここに住んでいる。
充敏さん:「当時はこの場所に平屋の実家があってね、店の前のうねうねした道が旧九州鉄道の線路だったんですよ。僕は大学で上京し、卒業後そのまま東京でバンド活動をやっていたんですが、どうやら地元では、大橋駅が高架駅になり、実家の目の前に駅が移設され、区画整理も行われるらしいと。そこで、実家が平屋からビルへと建て直すことになって、『お前、やってみるか?』と父からビルのいっさいを託されたんです」

竣工当時の写真。まだ周りに高いビルがなかったことがわかる

福岡へ帰郷した充敏さんは、「ドイツのBAUHAUS(バウハウス)みたいなビルを建てたい」と自ら設計し、当時は珍しかったコンクリート造のモダンな4階建てビルを完成させた。
ちなみに朋子さんは、充敏さんと出会った当初は、天神の家具店に勤めていたとか。
朋子さん:「勤務先の天神に部屋を借りていたけれど、主人のビルがあまりに素敵だったから、『わたしもココに住みたい!』と、大橋暮らしを始めたんです(笑)。中洲の映画館まで自転車で行ったり、電車を使えば天神まで10分もかからないから、寝坊しがちな私でも通勤がラクでしたね」

移りゆく景色の中で、昔と変わらない“気配”もある。

昔の下町的な風景を知っている充敏さんとしては、きれいに区画整理された周辺環境や店の入れ替わりについて、少し寂しく感じる部分もあるという。「40年前はもっとゴチャッとした感じで小さな商店がいっぱいあったんよ。けれど、近年は特に駅周辺の開発が進んで、新しいお店もずいぶん増えて都市化しましたね」と充敏さん。
とはいえ、アクセスの充実性が格段に上がったことは、住人にとってメリットだとも語る。2017年に大橋駅が特急停車駅となり、博多駅、空港、那珂川方面へのバス連絡がスムーズに。1日平均乗降人員については、西鉄福岡(天神)駅と薬院駅に次いで、大橋駅は3番目に多い駅。利便性が高いことで移住者が増え、ファミリー層からの人気も年々上昇している。

街並みは変化するけれど、かたや、昔から変わらない魅力も残っているはず。それは、街が醸し出す“気配”だと、武末さん夫妻は教えてくれた。
充敏さん:「芸工大(九州大学芸術工学部)、香蘭(香蘭女子短期大学)、純心(純真学園大学)など、“学園の街”という特性は、大橋の一つの雰囲気としてあり続けるものだなと感じます。どうやら東京の人からすると、「学芸大前」と空気感が似ているようですよ」
朋子さん:「都市化は進んでいるけれど、安くて旨いお店や、店主の顔が見える個人商店もあり、今も庶民的なムードだよね。普段、私は犬を連れてよく散歩をしているのですが、一人で歩いていると「今日ワンちゃんは?」と軒先で声をかけられたり、買い物中も店主とのコミュニケーションが楽しい。都会でありながら、ちゃんと大衆的なローカル感も残っているんです」

愛犬のミルくん。店頭に立ち(座り!?)、訪れる人を笑顔で迎えてくれる

好みや気分で使い分けできる、「食べ物の選択肢」が大橋のいいところ。

大橋といえば、飲食店の多さも特筆事項として欠かせないポイント。
充敏さん:「僕らが好きな店は決まっていて、まずは大衆フレンチの『ボンジュール食堂』と、姉妹店『ル・ピュイ』。行きつけの『御歌囃子(おかばやし)』の焼き鳥はサイコーだし、この前は『ワカミヤ食堂』に久しぶりに行ったなぁ。イタリアでのシェフ経験を持つご主人とポーランド人の奥さんが営む『ピッツエリア ラ・モネタ』もおいしいよ。そうそう、カレー屋もたくさんあるけど、カレーとスイーツのお店『かぼちゃ家』と、マニアックなネパールカレー店『マカル』がおすすめ」

朋子さん:「パン屋さんが多いから、種類によって選りすぐれる点も大橋の魅力。個人的な好みですが、クロワッサンを買うなら駅東方面の『ブロートアレー』、ハード系なら『ヤキチ』、近所には『カイチ』もあるし、ちょっと足を延ばして、大橋と高宮の間にある『日乃光』の塩バターパン、大楠の『うーぱんベーカリー』の食パンを買いに行くこともあります」
また、愛犬家の2人は看板犬のミルくんと暮らしており、散歩が日課。
朋子さん:「ミルとの散歩が楽しくて、大橋には公園や広場がたくさんあると思う!なんかね、公園の通称がかわいくて、向野東公園は「ライオン公園」、向野南公園は「どんぐり公園」と呼ばれてるんですよ。そうだ、「ヘリコプター公園」っていう公園も…!」

話の最後に、“大橋を色で例えるなら何色?”という質問を投げかけたところ、充敏さんはこう締めくくった。
充敏さん:「う〜ん、大橋は“ベージュ”かな。要するに、はっきりとした特徴があるワケではないんですよ。日によっては黄色っぽく見えたり、ある日はグレーっぽく、別の日はその中間色のように感じたり…とね」
時代とともに変わりゆくロケーションと、ずっと変わらずに存在し続ける街のムードと小さなお店、温かな人情味。それぞれがグラデーションのように溶け込むことで絶妙なニュアンスカラーとなり、大橋に新しい価値を生み出しているのだろう。

〜 Recommend Spot in Ohashi 〜

他とは一線を画する、“知る人ぞ知る”の焼き鳥の名店!

■ 御歌囃子(おかばやし)
住所:福岡市南区大橋1-12-19 益永ビル1F
TEL:092-542-2250
営業時間:18:00~LO翌1:30(日祝日~LO24:30)
定休日:火曜(祝日の場合は営業、翌日休み)

音楽好きの大将が営む焼き鳥店。「不意打ちにコアなBGMが流れて、面白いんです。砂ずり刺しと、トリナンコツ、たたきナンコツが特に絶品で、県外の友人を連れて行くとみんな喜んでくれます」と武末夫妻。朝引き鶏の新鮮な旨味を堪能して。

We are Here!
〈organ〉/大橋

■福岡県福岡市南区大橋1-14-5 Take1ビル4F■092-512-5967■13:00~19:00 月火休https://organ-online.com/

音楽、デザイン、家具、アート、クラフトに精通する武末充敏さん・朋子さんが営むセレクトショップ。北欧をはじめ、年に数回海外へ買い付けに出向き、“デザインの巨匠”が手がけた名作やヴィンテージアイテムを集め、ここで丁寧に紹介する。『organ』のためにわざわざ大橋へ訪れる遠方客も多く、二人とのおしゃべりも客の楽しみの一つ。

〜 エリア紹介:福岡市南区大橋 〜

福岡市南区にあり、商業地と住宅地の両面を持つ副都心。同区内の位置としては北部に塩原、東に那珂川を跨いで横手、南に三宅、西に筑紫丘と隣接する。大橋の中心部にある「西鉄大橋駅」は普通・急行・特急電車の停車駅であり、博多や天神、那珂川方面、空港方面へ繋ぐバスターミナルも連結。駅周辺に国立大学のキャンパスや女子大、行政機関、総合病院が揃い、福岡市のベッドタウンとして人気を博している。

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