極小エリアマガジン
福岡市中央区平尾2丁目
#45
Interview
「地に足をつけて暮らしを謳歌できる、平尾のバランス感。」
『MANLY COFFEE(マンリーコーヒー)』 オーナー・須永紀子さん

地に足をつけて暮らしを謳歌できる、平尾のバランス感。

今回ピックアップするのは、天神から2駅でアクセスできる福岡市中央区平尾。都心近くにありながらも、どこか落ち着いた雰囲気で、都会と住宅地の要素が溶け込んでいるイメージ。漠然と「住みやすいまち」という印象があるが、もう少しまちの解像度を高めながら平尾の魅力を理解してみたい。そこで、平尾2丁目に店を構える『MANLY COFFEE(マンリーコーヒー)』のオーナー・須永紀子さんにインタビュー。平尾に惹かれた理由や、長年身を置くことで実感する平尾の良さを伺ってみよう。

平尾は他のまちと空気感が違う…!?平尾に惹かれる理由とは?

平尾は天神からおよそ2kmという好立地でありながら、閑静な住宅地の側面も持ち、メディア等で取り上げられる「福岡の住みたい街ランキング」では常に上位をマークする人気のエリアだ。

西鉄平尾駅から徒歩2分の場所に、ひっそり静かに佇みながらも多くの人を魅了する自家焙煎コーヒーショップ『MANLY COFFEE』はある。迎えてくれたオーナーの須永紀子さんは、空気圧でコーヒーを抽出する「エアロプレス」を日本に広めた第一人者であり、コーヒー業界で“エアロプレスの母”とも呼ばれる有名な存在だ。須永さんが焙煎し、エアロプレスで淹れてくれるコーヒーを求め、わざわざ平尾まで足を運ぶ遠方客もたくさんいる。

開業当時は中央区小笹に店舗を構えていたが、2016年に平尾へ移転。きっかけはアパートの取り壊しによる立ち退きだったとのこと。須永さんが移転先に平尾を選んだ理由は何だったのだろう。

「移転が決定する前から、場所を移すなら平尾周辺がいいなと思っていました。なぜ平尾か、ですよね(笑)。20代の頃、スターバックス勤務時代に自宅から天神まで自転車通勤する際に、ちょうど平尾が通り道でした。南の方から平尾を抜けて薬院、天神へと向かう中で、平尾の手前くらいからまちの雰囲気が変わるんですよ。ちょっとワクワクする感じが漂うというか。でも都会すぎず、人が暮らしている温度感もあってバランスが絶妙。あと、平尾のまちのサイズもコンパクトで、個人的に良いなと思うポイントでしたね」

「開業しようと決意した2008年頃、天神エリアも盛り上がっていたけれど、天神から一歩離れた場所に個人オーナーの素敵なお店が増えていて、私も『お店を出すなら天神ではなく平尾辺りがいいな』と、その頃から思っていたんです。平尾は生活感のある住宅地と都会のちょうど狭間に位置し、若い人と年配の方が偏りなく住んでいる印象。あと、流れている空気がゆるやかで穏やかなんですよね。薬院に入ると少しスピード感が増して、シャンとしたムードがありますが、平尾は力を抜いていられる。それでいて、高宮よりちょっと洗練された感じもあり、そのちょうど良い塩梅にも惹かれましたね」

立ち退きが決まり、平尾、大楠、高宮周辺で物件探しをスタートした須永さん。不動産屋にいくつか提案してもらいつつ、自分でも平尾周辺の空き物件をリサーチしていたそう。ふと、一度訪れたことのある“古民家が集合する一角”の存在を思い出し、久しぶりに足を運んでみることに。それが今店舗を構えるスポットである通称「平尾村」だ。当時は寿司店『キヨノ』とサロン『マイカイハナマナ』の2店舗しか入居しておらず、ほとんどが空き家だったとか。

「最初は一人で平尾村の建物の様子を見に行ったのですが、当時は手入れがされていなかったのもあり、鬱蒼と暗い印象だったので、“ここはないな”と思っていたんです。でも後日、不動産屋さんから『春になると建物の裏に桜が咲くんですよ』とこの物件を紹介されて、桜が咲く光景を想像して胸が高鳴ったんです(笑)。あと、物件が角地だったのも良かった。素人目にはわからなかったポイントがあり、不動産屋さんにきちんと案内してもらったことで、ここでお店をするイメージが湧き、即決しました」

1丁目から5丁目の中でも周辺環境が異なる点に注目!

現在平尾に店を移して7年目を迎える『MANLY COFFEE』。年月が経過するにつれ、平尾に対する印象に変化はあったのだろうか。須永さんに尋ねてみると、微笑みながら「それがないんです」という言葉が返ってきた。

「最初に感じていた印象<都会すぎず静かすぎずちょうど良いバランス><ゆったりとした気持ち良い空気感>から今もほとんど変わってないですね。平尾を拠点にして結構経ちますが、がっかりポイントは見当たりません。身の周りの変化で言うと、通称『平尾村』と呼ばれるこの敷地内に面白いお店が増えて、楽しくなったこと。あと、平尾内にも素敵なお店が増えてきましたよね。西鉄平尾駅から近くてアクセスが良い一方で、お客さんの中には天神・薬院から平尾まで散策がてら歩いて来られる方も意外と多いんですよ」

冒頭でも触れたように、天神から平尾までは約2kmと歩ける距離感。幹線道路「高宮通り」が南北に縦断し、城南区別府方面へつながる「筑肥新道」や、それと並走する「山荘通り」が東西に横断し、通り沿いは物販店や飲食店が軒を連ねて賑やかな雰囲気。

(写真左)高宮通り、(写真右)山荘通り

特に高宮通りは交通量があり、路面店の灯りもあるので夜も比較的明るい。天神からの終電・終バスを逃したとしても徒歩やシェアサイクルで帰るのも苦ではない距離感だ。平尾1丁目・3丁目は薬院寄りになるので、天神・薬院から想像以上に近く、時間を気にすることなく外食を楽しみ、プライベートを謳歌できる。また、平尾2丁目をはじめ、市崎、高宮1丁目、大宮周辺は西鉄平尾駅に近く、子育て世帯をはじめ、アクティブな単身者や働き盛りのニューファミリー層に根強く人気のエリアだ。

平尾駅の駅ビルには内科や歯科、ジム、保育園が入居

ちなみに平尾2・4・5丁目に面する「筑肥新道」は、かつて博多~鳥飼を結んでいた国鉄筑肥線の廃線跡につくられた道。道幅が広く歩道も十分確保されているので徒歩や自転車も快適に往来できる。筑肥新道を挟んで向かい側の西高宮校区は、教育熱心なヤングファミリー層に人気のエリア。学業に力を入れている福岡市立西高宮小学校があり、同小学校に通わせるために学区内へ転居する家族もいるという人気のマンモス校だ。

「そうそう西高宮エリアは人気の校区ですよね。まさに平尾5丁目と平和の狭間あたりは古い建物から新しいマンションに建て替わり、大小さまざまなマンションが続々と増えている様子。駅近くの2丁目に比べるとお店の数よりマンションが多いので、より閑静な雰囲気で落ち着いて暮らせると思います」

筑肥新道沿いも新築マンションが続々登場している

西高宮エリアに隣接する平尾5丁目は、ゆったりしていて静かな生活が送れる環境。同じく高級住宅地と呼ばれる浄水通も平尾4・5丁目に隣接し、この界隈はゆとりを感じながら暮らしたい人におすすめのエリアだ。

閑静な住宅地の平尾4丁目にある「山荘公園」

心とカラダ、そして感性を豊かにしてくれるスポットが点在している。

平尾の変わらない魅力について語ってくれた須永さん。最後に、これからも残り続けてほしいものについて尋ねてみたら、自身の店を構える「平尾村」をあげてくれた。この「平尾村」は大通りからは見えない場所にあり、建物間の細い路地を進んだところにある。迷路のように入り組んだ路地の先に、レトロな古い長屋を改装した飲食店やギャラリー、ヘアサロン、アウトドアショップなどが集合し、昭和のムードと各店主の個性やセンスがうまく溶け込み、唯一無二のロケーションがとても面白い。

「平尾西」交差点の路面店の裏に「平尾村」がひっそりと佇む

「ギャラリー『二本木』では新しい展示会のたびに面白い作品が並び、いつも感性をくすぐられます。ギャラリーを主宰する松尾さん自身もアーティストとあって、窓越しに制作に取り組むシーンを見かけるのですが、その姿から物事に向き合うことの大切さを感じ、インスピレーションをもらっています。また花屋『花植物みどりあお』の植物に心癒されますし、うちのお隣さんのカレーショップ『フロータン』のおいしいカレーにも元気をもらっています!ヘアサロン『Plateaux(プラトー)』は私も通っているお気に入りの美容室です」

須永さんも大好物の『フロータン』のカレー

「敷地のさらに奥に2022年にアウトドアギアショップ『Moonlight Gear(ムーンライトギア)』がオープンしました。東京、大阪に次ぐ九州初上陸店がこんなニッチな場所にあるなんて面白いですよね。平尾村では、それぞれオーナーが自分の好きなことを自由に表現し、各分野に集中して取り組んでいます。そういった環境にエネルギーをもらいますし、『自分の道を邁進していいんだ!』と感じさせてくれる刺激的な場所ですね」

海外の観光客も新鮮な感覚で散策を楽しんでいるようで、この一角を『hidden place(隠された場所)』とコメントしていたのだとか。「とても良い表現ですよね」と須永さんは微笑む。

「ちなみに、平尾にオーガニック専門のスーパーマーケット『makii(マキイ)』があることも、住民にとって魅力的なポイントだと思います。生鮮食品から調味料、パンや惣菜、スイーツ、植物までなんでも揃っていて、しかも24時間営業。牛乳やアーモンドミルク、お水やジュースなども豊富に揃うので、近くにあって本当に助かっています。だいたい駐車場はいつも満車で、年々『マキイ』の人気が高まっている気がします」

『マキイ』では生花や植物も販売。須永さんもよく購入しているそう

個々の店が実力と人気を兼ね備えながらも、スピード社会に飲み込まれることなく自分たちのペースでQOL(=生活の質)を上げるモノ・コトを提供する。そういったスポットが平尾には多く存在し、大通り沿いは賑やかに、一歩入ったエリアはゆったりと穏やかに、住民とともに地に足がついた暮らしを営んでいる。

「平尾はコンパクトなまちですし、交通手段が充実しているうえ薬院や天神にも徒歩で行けます。それこそ、車を所有しなくても思い立ったらフットワーク軽くどこへでもパッと出かけられる環境。利便性に優れていながらも、ゆったりとした空気感が流れていて、いろんな楽しみを謳歌できるまちだと思います」

都会につながる洗練された落ち着いた空気感と、人の温かみや生活感といった安堵感や情緒が共存する平尾エリア。単身者からファミリー層まで、さまざまな人々がこのまちに暮らしたいと声を寄せる理由が改めてわかったように感じる。どの世代にもフィットする心地良さと快適性が、平尾にはたくさん広がっている。

Recommend Spot in Hirao

全国的にも珍しい、24時間営業のオーガニックスーパーマーケット

■スーパーマーケット makii(マキイ)
住所:福岡市中央区平尾5-19-1
営業時間:24時間営業
TEL:092-522-7000
定休日:無休
https://www.makii.com

1975年に八百屋として創業し、スーパーマーケットへと拡張。「無添加」「自然食品」「国内産原料」にこだわり、子どもから大人まで安心して取り入れられる身体にやさしい商品を取り扱い、ベジタリアンや健康志向の人からも大人気のオーガニック専門のスーパーマーケット。野菜や果物から、肉、魚介類、調味料、手作りの惣菜、パン・ケーキ、生花、日用品までオールジャンルが揃ううえ、いつでも駆け込める24時間営業もうれしい。

I’m Here
MANLY COFFEE

住所:福岡市中央区平尾2-14-21
TEL:092-522-6638
営業時間:10:00~17:00
定休日:日・月・火曜
https://www.instagram.com/manly_coffee/

2008年、「コーヒーの日」である10月1日にスタートした自家焙煎コーヒーショップ。オーナーの須永さんは福岡のコーヒーカルチャーを支える重要人物。空気の力で押し出す抽出法「エアロプレス」を日本に普及し、エアロプレスの日本大会を開催するなど、福岡から全国に向けてコーヒーの魅力を多角的に発信する。店舗には最先端の焙煎機〈Loring Smart Roast〉を導入し、ロースター(焙煎士)として豆のポテンシャルを引き出しながらとっておきの一杯を提供。ドリップコーヒーやエスプレッソドリンクも頼めるが、おすすめはやはりエアロプレスで抽出したコーヒー。透明感に満ちたおいしさをぜひ味わって。豆の購入ももちろんOK!

〜 エリア紹介:福岡市中央区平尾 〜

福岡市中央区の南端部に位置。地区の東側は西鉄天神大牟田線・薬院駅~平尾駅間の高架線に面し、また南側は旧国鉄筑肥線跡の「筑肥新道」に面している。平尾1・2丁目は薬院駅や平尾駅、幹線道路に近く、商業ビルやオフィスが多数連なる。平尾3~5丁目は坂の多い地形が特徴で福岡市動植物園に近く、高級住宅地と呼ばれる浄水エリアにも隣接し、幹線道路から離れているため閑静で落ち着いた雰囲気。スーパーマーケットやドラッグストア、青果店、鮮魚店なども充実し、人気の飲食店も多数。平尾駅は普通列車の停車駅だが、西鉄福岡(天神)駅から2駅と近く、西鉄バスの路線も充実しているので天神・博多へのアクセスも良好だ。

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