■西公園さくら参道
住所:福岡市中央区荒戸2〜3丁目(交差点「西公園入口」から西公園の参道入口の鳥居まで)
福岡が誇る2大公園に囲まれた、荒戸の快適な暮らし。
今回は福岡を代表する人気スポット、大濠公園と西公園に挟まれたエリア「荒戸」をピックアップ。大濠、大手門、港、唐人町という個性豊かなまちに囲まれた小さな地区だが、文化施設に恵まれた独特の地域性に加え、交通の便も優れていることから住宅地としても高い人気を誇るまちだ。そんな荒戸の暮らしぶりを覗くために、クラフトビール専門店『BEERHOLIC Far Yeast Fukuoka (ビアホリック ファー イースト フクオカ)』の店長・中原勢二さんにインタビュー。中原さんが実感する荒戸の魅力について話を伺った。
明治通り沿いは大濠公園が目の前。清々しく、安定感のあるまちなみ。
今回の目的地は福岡市中央区荒戸。このまちに店を構えるクラフトビール専門店『BEERHOLIC Far Yeast Fukuoka』は3丁目に位置し、片側3車線の主要道路・明治通り沿いに建つ。隣には芸能人も御用達のパスタ専門店『らるきぃ』があり、向かい側には店内にメリーゴーラウンドが飾られたレトロな店構えの『ミスタードーナツ 大濠ショップ』がある。そして、大濠公園の入り口が目の前という絶好のロケーション!やはり、この立地が出店の決定打となったのだろうか? まずは店長・中原さんにエリア&物件選びの背景を伺った。
「うちのお店は、山梨県のクラフトビール醸造所『Far Yeast Brewing(ファーイーストブルーイング)』の福岡初出店となる国内3店舗目のビアバーです。福岡に出店する際に、高砂にあるクラフトビール専門店『BEERSONIC(ビアソニック)』の店主・深堀さんとパートナーシップを組み、物件選びをしました。エリアは福岡市民にも観光客にも親しまれている大濠公園界隈を希望していて、色々と物件を探していたのですが、競争率が高い人気エリアとあって物件が決まるまでちょっと時間がかかりましたね…!」
「タイミングと縁で出合ったのが、もともと刀剣屋さんとして何十年も続いたこの物件。住所は『荒戸』になりますが、見ての通り、大濠公園が目の前! 公園の健やかな空気感が大通りにまで漂い、なんだか気持ちがいいですよね。公園にはウォーキング&ランニングコースがあり、美術館や能楽堂も併設していることから、さまざまな人たちが集まります。また、少し足をのばせば福岡PayPayドームがあり、最近は周りに素敵なお店もたくさん。そういったアクティブなまちを拠点に、クラフトビールを楽しめる新たなカルチャースポットになれたらという思いで、この場所に『Far Yeast Brewing』と『BEERSONIC』のコラボ店舗として『BEERHOLIC Far Yeast Fukuoka』をオープンしました」
プライベートでもワインやクラフトビールに精通し、さまざまな店に足を運びながらフットワーク軽く福岡ライフを謳歌してきた中原さん。そんな中原さんも『BEERHOLIC Far Yeast Fukuoka』の立ち上げ前までは「荒戸」が具体的にどこなのか、正直ピンときていなかったとか。
「このエリアを詳しく知る前は、荒戸といえば港付近のことかな?と思い込んでいました(笑)。もちろん港付近も荒戸になるのですが、同じ地区内に大濠公園に面する場所があるのだと知り、僕の中で新たな発見になりましたね。大濠公園はもちろん、『らるきぃ』『ミスタードーナツ 大濠ショップ』など目標建築物に囲まれているので、お客様に場所を案内する際もわかりやすくて助かります。流行り廃りのない安定感のあるまちであることも、このエリアの魅力ですね」
荒戸1丁目の北部エリアは、荒津大橋や「かもめ市場」が広がる港付近に位置し、荒戸地区唯一のスーパーマーケットである『マックスバリュエクスプレス 港町店』もある。この界隈や那の津通りには個人経営の居酒屋や小さな商店が建ち並び、どこか下町的な雰囲気。明治通りの都会的なまちなみと雰囲気が異なり、同じ地区内で庶民的なエリアと洗練されたエリアが両立するところが面白い。
昼夜でムードが一変!? 大濠公園以外の見どころも要チェック!
明治通沿いの荒戸3丁目に店を構え、地域の特性をより実感したと語る中原さん。その一つが昼夜の人通りの変化だ。
「朝から夕方にかけては通勤・通学の方々をはじめ、お散歩中の人やランナーがたくさん行き交いますが、夜9時〜10時頃になると人の流れがぴたっと止まり、本当に静かになるんです。ビアバーとして夜営業は難しいと感じ、地域の特性に合わせて『Drink & To Go』というコンセプトを掲げました。14時から営業することで明るい時間の解放的な空気感の中、“昼飲み”を楽しんでいただき、また宅飲みが充実する酒販の提案も行っています。お客様の中にはランナーの方もいて、走って汗をかいた後に一杯飲んで帰られるケースも多いですよ」
日中は人通りが賑やかな明治通りも、夜になると近隣住人以外はあまり見かけなくなる。とはいえ、主要道路が複数通る荒戸内は街灯が充実し、24時間営業のコンビニやマンションも多いので、夜道の歩行に関してはさほど心配はなさそう。昼間は健やかな空気に包まれ、夜は静かに過ごせる荒戸の住環境はとても快適で、治安のよさも垣間見えてくる。
ところで、大濠公園以外の魅力について知るために、中原さんに荒戸界隈の見どころを教えてもらった。
「近所に『西公園浴場』という昔ながらの銭湯があり、肌に優しい軟水使用したシルキー風呂や電気風呂、超音波風呂、水風呂もあっておすすめです。普段は夕方5時からの営業なんですが、毎月第3土曜のみ9時半から営業していて、ランナーの方にも喜ばれています。また最近では、私たちのように酒販や酒場を兼ねたブルワリー(ビール醸造所)が近所に増えてきている様子。僕自身、もともとお酒が好きで以前から隣まちの大手門にプライベートで通っていたのですが、例えば『焼とり 鳥次(ちょうじ)』や『博多水炊き専門 橙(だいだい)』、自然派のビストロ『Cro-magnon(クロマニヨン)』、その姉妹店の『酒場サークル』、ナチュラルワインがおいしい『魔灯路場amber(アンバー)』など、大好きな店が近くにあるのは個人的にうれしいですね。その中の一つ、『Lille Curry Bar(リル カレーバー)』も仲良くさせてもらっていて、うちのクラフトビールを扱っていただいています」
荒戸から東方面へ徒歩3〜5分の『Lille Curry Bar』
荒戸界隈、特に隣まちの大手門にはグルメな大人たちが通う人気店が近所に集まり、それぞれの店で客同士のコミュニティが育まれているので、この辺りに住むと外食も楽しく、常連客の仲間入りを果たせてプライベートの時間が充実しそうだ。また、荒戸の西端に面する唐人町商店街も地元に根づく老舗が軒を連ね、八百屋や惣菜店、パン屋、和菓子屋などがずらりとひしめく。
荒戸の西端には100軒近いお店が集まる『唐人町商店街』がある
中原さん曰く「荒戸界隈のお店は、近所のお客様で成り立っていると思います。もちろん大濠公園に遊びにこられたお客様も多いですが、常連客はやはりご近所さん」。近隣住民にいかに心地よく過ごしてもらうか、楽しんでもらうか。その感覚を大事にしながら、地域に寄り添える店づくりを大事にしていると語る。ちなみに、常連客の様子から伺える荒戸界隈の住民層があるとしたら? そこも気になるところだ。
「これは僕の所感ですが、暮らしにゆとりがある人が多いように感じますね。ガツガツもギスギスもしていなくて、品があって穏やかな人が多い印象。お客様の中には、幼稚園バスのお迎えに向かう前に小休止を打ちに来られる奥様方もいて、読書しながらビールを一杯軽く飲んでいかれます。また休日のお散歩やジョギング中に立ち寄ってくださる方も多数。樽生のクラフトビールは一杯1,000円近くしますが、それを日常の楽しみとして味わい、自分の時間を愉しみ、充実した暮らしを謳歌する。そういったご近所さんに恵まれていることを実感しています」
荒戸の住み心地の良さは、利便性の高さと、健やかな住環境にあり!
現在自転車通勤の中原さんは、毎日の通勤が気持ちよく快適だと語る。その理由は、心を解放する自然豊かなルートと道幅の広さにあるという。
「スタッフも自転車通勤者が多く、それぞれ福岡城跡を眺めながらお堀沿いを通るルートや、大濠公園の中をランニングやウォーキングする人たちに混じって突き抜けるルート、公園界隈の高級住宅地を通るルートなど、人によってお気に入りの通勤路があるようです。特に明治通り沿いは道幅が広く、歩道と自転車用のレーンが分かれているので安全ですし、すっきり視界が開けているのも気持ちいいですね」
晴れた日は天神や赤坂、薬院などの商業地域まで、散歩がてら足をのばせるのも荒戸の立地面の魅力。一人で音楽を聴きながら、また一緒に歩く人と話しながら歩けば、天神や薬院までの2〜3km(徒歩約25〜30分)の道のりは案外あっという間で、いい運動にもなる。さらに、バスや地下鉄といった公共交通機関の利便性の高さもポイント。地区内に地下鉄大濠駅の出入口があり(場所によっては唐人町駅が最寄りになり)、天神や博多、福岡空港まで乗り換えなしでスムーズに行ける。また明治通りと那の津通りのそれぞれに西鉄バスが通っているので、移動手段に関して小回りが効く環境がうれしい。
これから3〜4月にかけて、花見シーズンで荒戸界隈がより一層盛り上がる。近所の福岡城跡では「さくらまつり」が開かれ、大濠公園・舞鶴公園を中心にたくさんの出店と見物客で賑わう。また荒戸からすぐの西公園も、福岡県内で唯一「日本さくら名所100選」に選ばれる景勝地。福岡を代表する桜の名所に徒歩圏内で行けて、美しい景色に囲まれた暮らしを送れるのは、荒戸住民の特権だ。
「観光客の方には舞鶴公園の花見が人気ですが、地元の方々に親しまれている西公園の桜が個人的におすすめです。昨年は新型コロナ“第6波”の影響で西公園での花見イベントや宴会等が自粛規制されていましたが、今年はさくらライトアップも再開されると聞いているので期待しています!」
西公園からまっすぐのびる「西公園さくら参道」の景色は圧巻
『BEERHOLIC Far Yeast Fukuoka』では花見シーズンに合わせて限定メニューを出したり、桜スポットの散歩コースを案内したり、春の風物詩を楽しむ提案を行う予定。あたたかな春の訪れとともに、荒戸一帯が活発な雰囲気に包まれ、ここでの暮らしもより明るく、素敵に彩られそうだ。
「僕を含めスタッフみんなが休憩時間に公園に行って、ベンチで食事をしたり、ふぅ〜っと気分転換したり、思い思いの時間を過ごしているようです。日常の慌ただしさから逃れ、心をリセットできる場所が近くにある環境はありがたいですね。もともと体を動かすことが好きだったのもあり、僕も時間が許す限り仕事終わりに大濠公園を走っています。ほんと気持ちがよくて最高ですね!」
都心のオアシスに身を寄せ、健康的な暮らしを謳歌できる荒戸の暮らし。顔見知りのお店ができる喜び、自然豊かなスポットが点在する爽快感、下町と都会が一体化するまちのおもしろさなど、いろんな楽しさが身近に転がっていて、ここに住むことでライフスタイルに良い変化が起きるかも…!? 新生活の舞台として、きっと最高のエリアになるに違いない。