■blanc cotta(ブラン コッタ)
住所:北九州市八幡西区引野1-22-17
TEL:093-777-6010
営業時間:13:00~22:00
定休日:月〜水曜
https://www.instagram.com/blanc_cotta/
八幡西区の小さな住宅地・引野、その住み心地を探る!
今回は北九州市八幡西区のベッドタウン、引野(ひきの)をクローズアップ。北九州第二の繁華街・黒崎駅界隈から3kmほど離れた住宅地・引野エリアでは、どんな暮らしが営まれているのだろう?日頃から近隣住民と温かな交流を育むデリカテッセン『Delica Cotta(デリカコッタ)』のスタッフ・古海(ふるみ)涼子さんから、引野のまちの様子や地域性について話を伺いたい。
閑静な住宅地に素敵なお店が集合。築60年の長屋に注目!
引野エリアは、代々続く地元住民や居住歴が長いファミリー世帯が多い小さな住宅街。そんな閑静なエリアでひときわ存在感を放つのが、長屋をリノベーションした4つの店舗。向かって左からカフェ、雑貨&喫茶店、カヌレ専門店が連なり、その隣にデリカテッセン『Delica Cotta』が入居している。『Delica Cotta』スタッフの古海涼子さんは下校中の小学生やご近所さんにも気さくに声をかけ、その場をパッと明るくするムードメーカー的存在だ。
古海さんに、まずは引野のまちの特色を聞いてみた。
「この界隈は“ザ・住宅地”だから目立ったランドマークが特にないのですが、近隣住民にとって引野と言えば、北九州都市高速・黒崎インター出入口(引野口)の印象が強いかもしれませんね。高速バスの停留所もありますし、うちのお店の前の道路も引野口から黒崎駅や折尾方面へ向かう通り道に使われていますよ」
そう古海さんが語るように、クルマ社会が根付く八幡西区では黒崎インター出入口(引野口)の利用頻度が高いようだ。では、なぜ閑静な住宅地に『Delica Cotta』はお店を構えたのだろう。
「もともとこの長屋には美容室やガラス屋さん、旅行代理店などの商店が並んでいたそうで、しばらく空いた後、2015年に『cafe daneco(カフェ ダネコ)』、2016年にカヌレ専門店『DEBORAH(デボラ)』、2017年に『Delica Cotta』と2軒隣の雑貨店『GOOMROOM(グームルーム)』がオープンしました。うちの店主からは、『GOOMROOM』のオーナーさんに物件を紹介してもらい出店を決めたと聞いています。どのお店も素敵なセンスを持っていて、『賑やかなまちから一歩離れたこの場所で自分のペースで営みたい』という思いが共通しているんでしょうね。店の佇まいも緩やかなリズム感も、長屋全体で共鳴し合っているように感じます」
住宅地にひっそり寄り添いながら、おいしいものと心地いい時間を提供する4軒のお店たち。「こんな場所にこんなオシャレなお店が…!」と話題を呼び、この長屋こそが引野のランドマークを担っているのではと感じるほど、地域住民をはじめ遠方からもたくさんの人が訪れ、リピーターに愛される場所になっている。
『cafe daneco』の手作りケーキはテイクアウトも可能
おしゃれなカヌレが女性に大好評の『DEBORAH』
雑貨や器をセレクトする『GOOMROOM』(写真左)、2階は人気カフェの『教授の休日』(写真右)
新興住宅地とグルメなまちが広がる、引野周辺をご紹介。
引野に隣接する鉄王(てつおう)と、その隣の鉄竜(てつりゅう)は、昭和から平成にかけて旧・八幡製鐵(現・日本製鉄)の社宅エリアだった地域。その後都市開発で社宅群は取り壊され、現在は戸建て住宅がずらりと建ち並ぶ新興住宅地になった。まちの景色は変わったものの、今も近所には八幡製鐵ビルディング(通称:テツビル)が設立したスーパーマーケット『スピナ』があり、一部の住民からは「テツビルストア」との愛称で親しまれ、“鉄の町”の歴史を垣間見ることができる。
昔も今も、地域住民の生活を支えるスーパーマーケット『スピナ』
鉄王エリアが戸建てを中心とした新興住宅地となったことで、向かい側の引野も含めて見通しが良くなり、街路樹や歩道が整備されてきれいな街並みになったと古海さんは語る。登下校する児童や生徒からも自発的に挨拶が交わされ、明るく元気な雰囲気が息づいている。
旧・八幡製鐵の社宅地から新興住宅地に生まれ変わった鉄王エリア
引野から約1kmの場所にある相生町(あいおいちょう)は、飲食店や物販店、銀行、病院などが集合し、生活に必要なものが揃うまち。八幡西区の台所と呼ばれる『マルゼンストア』を中心に商店街が広がり、老舗の飲食店や物販店が今も親しまれ、カジュアルな居酒屋やカフェも新たに加わるなど賑やかな雰囲気。ランチタイムは満席状態が続く『謝々(しぇいしぇい)餃子』は、相生町の名物店の一つ。コストパフォーマンスに優れ、サラリーマンや家族連れなど幅広い層から人気の老舗中華店だ。
相生町のメイン通り(写真左)。『謝々餃子』は炒飯+餃子セットが人気(写真右)
メイン通り沿いにある老舗和菓子店『ござ候屋(そうろうや)』も長く愛される人気店。甘酒まんじゅうやおはぎ、串団子などを販売し、昼過ぎには売り切れることも多々。初夏から秋にかけて登場する麩饅頭は、「もちもちフワフワで本当に美味しいんです! 私も麩饅頭を手土産に選ぶことが多くて、ぜひ食べてもらいたい一品ですね」と古海さんもレコメンド。
よもぎの香りと餡子の優しい甘みが広がる麩饅頭
また、引野に隣接する竹末エリアも名店揃い。1975年創業の『富貴亭(ふきてい)』は中華丼が名物の老舗で、半世紀の歴史とともに地元のソウルフードとして愛され続けている。他にもしゃぶしゃぶが看板メニューの『一咲』、創作ラーメンが自慢の『麺屋 満月』、ステーキランチが人気の『BARU(バル)竹末』など、グルメな古海さんがおすすめする飲食店が引野からほど近い場所にぎゅっと集合。徒歩でも行ける周辺エリアに多彩な店が点在しているのは、引野の住環境としてうれしいポイントだ。
子供もイキイキ!地域交流や催事が盛んな引野エリア。
『Delica Cotta』が入居する長屋の所有者である駄菓子屋『岩崎商店』のオーナー・岩崎さんも、引野住民の暮らしを支えるキーマンだ。駄菓子屋の開店時間は15時から19時頃まで、小・中学生の下校時間に合わせてオープンする。お小遣いを握りしめた小学生たちが集まり、くじ付きのお菓子を買ったり、軒先でゲームをしたり、昔ながらの光景が今も変わらず繰り広げられているのを見ると、なんだかホッと心が和む。
「この通りは黒崎・折尾方面への通り道にも利用されるから、住宅地だけど交通量が多いのよ。だから私たち、大人がちゃんと子供たちを見守らなきゃね」と岩崎さん。
駄菓子屋『岩崎商店』の岩崎さんは、登下校の時間に旗振り活動を行う
旗振り役を長年務める岩崎さんは、子供たちにちょっとでも元気を与えたいからと、キャラクターの被り物を身につけて交差点に立ち、旗振り棒はキラキラ輝くお手製のスティックを使用。「これなら車の運転手も誘導に気づきやすいでしょう?」と微笑み、行き交う人々に気さくに声をかけながら引野の治安を守り続けている。
駄菓子屋の奥様を「ママちゃん」と慕う古海さんもご近所さんとの間柄を育み、近所の子供たちと会話を楽しむなど、まちの平穏な環境を大切に守っている。
ちなみに『別所公園』は、地域住民の集い場。公園には子供たちが遊びに駆けつけ、グラウンドではスポーツクラブの練習などが行われ、併設の引野市民センターではカルチャースクールも開かれている。春になると園内は桜の花見会場となり、夏は伝統行事の「引野祇園山笠」、秋は「引野ふれあい文化祭」と題してバザーやカラオケ大会が開催。新年に行われる健康祈願の行事「どんど焼き」では、来場者にぜんざいが振舞われ、住民同士の交流の場に。
「引野祇園山笠」では子供たちが太鼓の演目を披露
「以前、別所公園ではマルシェも開かれていましたね。地域のお祭りや伝統行事、市民センターでのイベント、交流会など、引野では年間を通して様々な催しが盛んに行われているようです。婦人会や青年団など地域の方々の積極的な協力体制が築かれているんでしょうね。地域ぐるみで老若男女がふれあえる機会がたくさんあるからこそ、子供たちがのびのびとしていて表情も明るいし、気さくに挨拶してくれるフレンドリーな環境が保たれている気がします。引野は温かく穏やかで住みやすいと思いますよ!」
古海さんの言葉通り、下校中の子供たちはすれ違うたびに「こんにちは!」と元気に声をかけてくれて、こうした挨拶の文化がアットホームな住民の気質を象徴しているようにも感じる。人と人がふれあい、助け合い、みんなで地域の温和なムードとコミュニティを守り続けている引野の地域性はとても素晴らしい。長く住むことを考えた場合も、この温厚なまちのムードは住み心地のよさに繋がるに違いない。