〇〇〇ができるまで
賃貸マンション編
#5

入居環境を整える『内装』

賃貸マンションのアレコレをわかりやすく紹介します。
第五回目は、建物完成への最終ステップ「内装」のお話です。

こんにちは、Good life magazineです。

建設業界に関わるモノゴトについて「〇〇〇ができるまで」と題し、さまざまなことのはじまりから完成までをご紹介します。

今回のシリーズは、多くの方が住んでいる「賃貸マンション」がテーマ!賃貸マンション建築&経営の大きな流れ、重要なプロセス、欠かせないチェックポイント、業界の豆知識を交えて紹介していきたいと思います。

【登場人物】

■相談者:建主・Aさん
所有する土地を活用し、目指すは不動産経営!これから賃貸マンションのオーナーになるために、情報収集に勤しんでいるところ。
オーナー経験は初めてなので、マスターから色々と学ぶ予定。
■解説者:賃貸マンションマスター

賃貸マンションについて、ありとあらゆることを熟知するマスター。建築業界人も一目置く存在だとか!?ここでは専門家として、建主・Aさんに賃貸マンション建築の流れや、為になる豆知識を伝授。

工事が円滑に進むための準備。
現場に向けた「施工図(せこうず)」を作成!

賃貸マンションマスター
第4話では外装のお話をしましたが、実は内装の工事も外装工事とほぼ同時に行われます。その準備として、現場担当者が「施工図(せこうず)」と呼ばれる図面を書くのがお決まり。これは工事に必要な細かい寸法や使用材料などを書き込んだ図面のことです。

建主・Aさん
あれ、「設計図」があれば必要ないのでは?

賃貸マンションマスター
いい質問ですね!「設計図」と「施工図」は、書かれている内容と目的が異なります。設計図は間取り、建物の大きさ、敷地内の位置、内装や外装の仕様、その他設備など諸々に関する図面のことで、建主や検査機関に向けて作成されるもの(※第2話を参照)。一方施工図は、設計図をもとにした作業毎に必要な図面のことで、現場で施工する人たちに向けて作成しています。

なぜ施工図が必要かというと、設計図には内装・外装の細かい寸法などは書かれていないので、建築現場の各工種・職種の業者さんが円滑に施工できるように予め詳細な情報をまとめておかなければなりません。“施工図があって初めて現場が動く”と言われるほど重要な資料になるんですよ。

建主・Aさん
なるほど。料理で例えると、レシピみたいなもの…!?

賃貸マンションマスター
そう考えるとわかりやすいですね。施工図をもとに資材を発注し、いざ内装工事がスタートです!

ガス、水道、電気、大工、クロスなど
各分野のプロの職人が総結集!

賃貸マンションマスター
さて、外装の回で話したように(※第4話を参照)、コンクリート躯体が出来上がると1階からサッシを取り付けていくのですが、内装工事ではこの後に浴室などのガス配管・水道管、電気配線の施工が始まります。

建主・Aさん
壁・床・天井で覆われる前に取り掛かからないといけない部分ですね。

賃貸マンションマスター
はい。それぞれガス屋さん、水道屋さん、電気屋さんなど、各専門業者によって工事が進められます。配管・水道管・配線工事が済んだら、次は浴室のユニットバスの取り付け。賃貸マンションの場合はほとんどユニットバスが採用されるとあって、現場にてスピーディーに組み立てられます。その後、部屋の間仕切りを施すべく、大工さんが現場に加わります。

建主・Aさん
おぉ、大工さんの登場!

賃貸マンションマスター
壁・床・天井、ドアまわり、収納など、目に見える大部分の工事を大工職人が行い、それが終わるとビニールクロス、いわゆる壁紙の工程に進みます。壁紙をきれいに貼るために、ボード貼りの職人が天井や壁の下地として石膏ボードを貼り、その上からクロス職人が壁紙を貼るという流れ。この際、石膏ボードの継ぎ目に隙間がないか、コンセントや火災報知器の位置に誤りがないかを確認した上で一面一面、丁寧かつ正確な手さばきで壁紙が貼られていきます。

建主・Aさん
話を聞いていると、各分野のプロの職人さんが入れ代わり立ち代わり現場に入る環境なんですね。臨場感が伝わります。

賃貸マンションマスター
まさにそう。1フロアずつ工程をスライドし、各専門業者の連携によって着々と内装工事が進められます。高層マンションの場合は、最上階の躯体工事が終わっていないうちに低層階の内装・外装工事が終わっている…という状況もありますよ。一戸ずつクロスの仕上がりや、隅々の納まりが正確かつきれいになされているか、品質管理を徹底しながら各工程が進んでいきます。すべては、入居してもらう方に気持ちよく住んでもらうため。

部屋のベースが出来上がったら
住宅設備や建具の取り付け開始。

賃貸マンションマスター
壁紙まで貼り終えると、キッチンや洗面台、便器などの住宅設備、そして建具の取り付け工事が行われます。

建主・Aさん
素人の素朴な疑問ですが、水まわりということで、浴室のユニットバスと同時に洗面台や便器を取り付けちゃダメなんですか?

賃貸マンションマスター
お風呂がユニットバスの場合は壁に組み込まなければならないので、早い段階で設置するんです。かたやキッチンや洗面台、便器は、内装がほぼ仕上がった後に取り付けるのが一般的。ちなみに、扉も内装工事の終盤で取り付けるのですが、その理由は工事の邪魔にならないため、また完成前に住宅設備や建具に傷を付けないためです。だから最後に取り付けられるというわけ。

建主・Aさん
そういうことかぁ。ところで、最近の流れとして、賃貸マンションで人気の作りなどはありますか?

賃貸マンションマスター
ウォークスルークローゼットやウォークインクローゼット、シューズクロークを採用する賃貸マンションが増えているようですよ。荷物をたくさん仕舞えますし、無駄のない生活動線も現代のライフスタイルのニーズに合っているんでしょうね。

最後の砦は、数多く行われる「検査」。
オーナー大感激の瞬間が訪れる…!

賃貸マンションマスター
最後にハンガーパイプやカーテンレール、収納部分の棚板、排気口用のキャップ、ダウンライトなど、細かいパーツの取り付けが行われます。余談ですが、例えば電気業者は、一戸につき複数回工事に入るんですよ。①壁などが無い状態で電気配線、②天井や壁ができる段階での電気配線、③壁紙が貼られた段階での照明器具・スイッチ・コンセントの取り付け…と3段階に分けて作業を行われています。それが各戸、各フロアで行われるので、ほぼ毎日現場に入って作業しているような状態ですね。

建主・Aさん
いろんな業者さんが関わり、毎日各フロアでいろんな工程が行われているんだな~。

賃貸マンションマスター
現場担当者と職人さんの間で毎日会議が行われ、直近の計画を細かく確認することで、それぞれの工事が円滑に進められているのです。さあ、一通りの内装工事が終了したら、仕上げの「美装工事」へ!これは工事中についた埃や養生の跡、接着剤などの汚れを取り除き、フローリングにワックスをかけてきれいな状態に仕上げるクリーニング作業のことです。

建主・Aさん
ついに賃貸マンションが完成…!??

賃貸マンションマスター
あと少し!植栽や屋外設備の自転車置き場、ゴミ置場などの「外構工事」も完成した上で、建物の引き渡しに向けての最終段階に入りますよ。前述の美装工事が終わると、施工に携わった電気・設備・大工・クロスなど各業者が仕上がりに問題がないかを検査します。クリアした後は、建設会社がマンションの全体をくまなく検査。万が一手直しが必要であれば適宜対応します。さらに消防や保安、第三者機関など諸々の申請・検査を経て、すべて通過したら最後の最後に建主の立会い検査を実施。

立会い検査は自分の目で直接確認できる大事な機会なので、工事の手直しが必要ないか、細かい部分までしっかり確認しましょうね。それはそうと、建主が一番感動する瞬間でもあると思います。自分も住みたい!と思うほど、大満足の仕上がりに感激するはず…!こうして、賃貸マンションが「竣工(完成)」となり、登記関係や必要書類の手続き、工事費の清算などが行われ、鍵の引き渡しへと移ります。

建主・Aさん
自分の賃貸マンションが完成したときのことを想像すると、胸が高鳴りますね!いよいよ鍵の引き渡しかぁ。ある意味、オーナーとしてはこれからが本番という気がします。マスター、入居者獲得の手段についても詳しく教えてください…!

●次は「入居」に関するステップやノウハウを解説します。