〇〇〇ができるまで
賃貸マンション編
#4

入居率と建物寿命を左右する『外装』

賃貸マンションのアレコレをわかりやすく紹介します。
第四回目は、建物の“顔”となる「外装」のお話です。

こんにちは、Good life magazineです。

建設業界に関わるモノゴトについて「〇〇〇ができるまで」と題し、さまざまなことのはじまりから完成までをご紹介します。

今回のシリーズは、多くの方が住んでいる「賃貸マンション」がテーマ! 賃貸マンション建築&経営の大きな流れ、重要なプロセス、欠かせないチェックポイント、業界の豆知識を交えて紹介していきたいと思います。

【登場人物】

■相談者:建主・Aさん
所有する土地を活用し、目指すは不動産経営! これから賃貸マンションのオーナーになるために、情報収集に勤しんでいるところ。
オーナー経験は初めてなので、マスターから色々と学ぶ予定。
■解説者:賃貸マンションマスター

賃貸マンションについて、ありとあらゆることを熟知するマスター。建築業界人も一目置く存在だとか!? ここでは専門家として、建主・Aさんに賃貸マンション建築の流れや、為になる豆知識を伝授。

外装も準備から念入りに!第一工程はサッシの取り付け。

賃貸マンションマスター
外装の工事を始めるにあたり、外装の作業計画が立てられ細かいスケジュールが組まれます。また基礎・躯体(くたい)工事に引き続き定期的な会議が行われ、場合によってはこのタイミングで再度、建主と一緒に外装の材料や色味を検討・最終決定する場が用意されることも。ただし、設計会社や施工業者によって進め方が異なるので、設計図通りにそのまま進められる場合もあります。気になる際は問い合わせてみてください。

建主・Aさん
個人的には、外壁の色味は建物の印象を左右するので慎重に決めたいです~。

賃貸マンションマスター
建主への配慮がきめ細やかな会社だといいですよね。さて、外装工事についてですが、最初の工程はサッシの取り付け作業です。高層階の躯体が未完成であっても、低層階の躯体が出来上がっていればOK。1階から順にサッシが取り付けられます。

タイル、塗装、コンクリート打放しなど、マンションの“顔”となる外壁仕上げ。

賃貸マンションマスター
マンションの外装デザインは多種多様あり、工事の方法もそれぞれ異なりますが、外壁が「タイル仕上げ」であれば、サッシを取り付けた後にタイル貼りの作業へと移ります。サッシと同じく低層階から貼り始め、例えば20戸ほどのマンションであれば3〜5人のタイル職人が一斉に行うようなイメージ。

さまざまなタイルがある中で、マンションでよく使われるのは「45二丁掛け(よんごうにちょうがけ)」のサイズ。目地を含めて50mm×100mmのものです。あとは「二丁掛け」と呼ばれる228mm×60mmのサイズもよく見かけますね。きちんとした外観のマンションは、躯体に対してタイルが半端に切れることなくキレイにおさまるように設計されていて、見た目のクオリティーを上げるための細かな計算がなされています。またタイルの付着強度を確認する試験も行い、しっかり頑丈に貼られています。

建主・Aさん
「タイル仕上げ」の他、どんな外装の種類がありますか?

賃貸マンションマスター
マンションだと、コンクリート壁に色を塗った「吹き付け塗装」や「コンクリート打放し」、「石材(御影石など)仕上げ」などがポピュラー。近年の賃貸マンションで多く見られるのは「タイル仕上げ」ですが、吹き付け塗装×タイル仕上げ、コンクリート打放し×タイル仕上げなど、いくつかの仕様を組み合わせた外装デザインも主流ですね。

もちろん、どんな外装にするかは建主次第!ただ外装のデザイン、使用する素材、そのサイズ感によって、かかる費用や施工内容、作業スピードなどが変わることは念頭に置いてくださいね。この辺りは建物のプランニングや設計の際に、担当者から説明があると思います。

建主・Aさん
なるほど〜。どんな素材のマンションにしようかな…(ボソッ)。

スプレーガンで吹き付け塗装!…の前に、色見本の確認をお忘れなく。

賃貸マンションマスター
吹き付け塗装×タイルを組み合わせた外装の場合も、まずはタイル貼りから作業を取り掛かり、その後に吹き付け塗装の工程に進みます。「吹き付け」とは何か? それは刷毛を使った塗装ではなく、専用のスプレーガンを用いて塗料を霧状にして噴射させる=吹き付ける塗装法のことです。仕上がりが美しく、作業スピードが早いため、外壁の面積が広いマンションの塗装はほとんど「吹き付け塗装」が採用されています。

建主・Aさん
一気に塗装するんですね! この際に「イメージしていた色と微妙に違う」みたいなトラブルはありませんか?

賃貸マンションマスター
吹き付けの本番前に、大きめの見本板を使ってテストが行われるはずです。建主も事前にその見本を見て仕上がりの確認を行うことが多いですよ。自然光の下で朝・昼・晩それぞれの時間帯で見ておくと安心かも。このように最終チェックを経て、実際に壁に塗装を行うのが一般的な流れです。この後、ベランダや通路の床にも吹き付けやシートを貼り、手すりや雨どいなどの取り付けを行います。

建物の性能や寿命を左右する「防水」「断熱」の大事な話。

賃貸マンションマスター
タイル貼りや吹き付け塗装が終わったら、次はシーリング材を打設します。サッシと外壁の繋ぎ目や、コンクリートと外壁の境目など、建物の目地をシーリング材で埋め合わせる工事のことで、防水性や気密性を確保するために行われます。また、屋上のコンクリートの上に断熱材などを敷き、断熱性と防水性を強化する工事も実施します。

建主・Aさん
最上階の住人は夏の暑さと冬の寒さに悩まされている、と古いマンションで耳にしました。屋上の断熱性もしっかり高めなければですね。

賃貸マンションマスター
その通り! 防水&断熱加工も外装工事の大事なポイントです。断熱の話でいうと、ここ10〜20年で窓ガラスの性能の幅や種類が広がり、戸建てや分譲マンションでは複層ガラスが当たり前に使われていますが、最近は賃貸マンションにも取り入れられるケースが増えてきました。普通のガラスに比べて費用が高いものの、住む方々が快適に暮らせることから顧客満足度が上がり、賃貸マンション経営の安定化を期待できると話題です。入居者募集の際も、他の賃貸マンションと差別化を図れるアピールポイントになりますしね。

建主・Aさん
外観としては見えない部分の性能面も、マンション経営の大事なポイントか~!

賃貸マンションマスター
外装は見た目の美観性だけではなく、コンクリート躯体の劣化防止・耐久性保持の役割も担っています。外壁を専用塗料やシートで覆い、目地にシーリング打設を行うでことで躯体が守られ、マンションの寿命や資産価値を保持することに繋がるのです。賃貸マンションオーナーとなる建主の方々には、デザイン性のみにとらわれず、建物を健全に保つための視点も持っていただきたいですね。

さあこれで、基本的な外装工事が終了。「タイル仕上げ」の場合は、タイルに付着した目地の汚れなどを洗浄し、ピカピカの美しい外観に仕上げます。こうして立派なマンションの“顔”が出来上がると、賃貸マンションオーナーとしての実感が湧いてきそうですね!

建主・Aさん
ほんと、外観を想像しただけでもグッとくるものがあります。今回は外装工事の隠れたポイントを知ることができてよかったです! マスター、引き続き解説をお願いします!

●次回は賃貸マンション工事の最終章「内装」について学びます。