〇〇〇ができるまで
賃貸マンション編
#3

ついに基礎・躯体(くたい)の工事開始!

賃貸マンションのアレコレをわかりやすく紹介します。
第三回目は、建物の要となる「基礎・躯体(くたい)工事」のお話です。

こんにちは、Good life magazineです。

建設業界に関わるモノゴトについて「〇〇〇ができるまで」と題し、さまざまなことのはじまりから完成までをご紹介します。

今回のシリーズは、多くの方が住んでいる「賃貸マンション」がテーマ! 賃貸マンション建築&経営の大きな流れ、重要なプロセス、欠かせないチェックポイント、業界の豆知識を交えて紹介していきたいと思います。

【登場人物】

■相談者:建主・Aさん
所有する土地を活用し、目指すは不動産経営!これから賃貸マンションのオーナーになるために、情報収集に勤しんでいるところ。
オーナー経験は初めてなので、マスターから色々と学ぶ予定。
■解説者:賃貸マンションマスター

賃貸マンションについて、ありとあらゆることを熟知するマスター。建築業界人も一目置く存在だとか!? ここでは専門家として、建主・Aさんに賃貸マンション建築の流れや、為になる豆知識を伝授。

賃貸マンション着工前の伝統儀式。

土地の神様に祈願する「地鎮祭」!

賃貸マンションマスター
前回は設計についてお話しましたが、今回は建築工事の最初のステップについてお話ししますね。ついに工事現場が動き出すというシチュエーションです。

建主・Aさん
ようやく自分の土地に賃貸マンションが建ち始めるところですね…! 土地調査から設計図完成まで数ヶ月かかった分、建主としても“待ってました!”といった気持ちになります。工事はまずはどんなことから始まるのでしょうか?

賃貸マンションマスター
一般的には最初に「地鎮祭」を行うことが多いですね。地鎮祭とは、工事開始時にその土地の神様にご挨拶を行い、土地を使わせてもらうことや工事を行うことに許しを得て、建築工事が安全に終えることを祈願する儀式です。建築物の規模や地域によって地鎮祭の形式は異なりますが、土地の四隅に青竹を立て、しめ縄で土地を囲って祭場とし、神主をはじめ建主や設計事務所、建築業者などの関係者を集めて行われます。地鎮祭は必ず行わなければならないものではないですが、縁起を担いで行われるケースがほとんどですよ。

スムーズかつ安心・安全な工事のために。
細かな作業計画と、建主参加の定例会議。

賃貸マンションマスター
工事開始前の準備として、工事がスムーズに進むように細かな「作業計画」が立てられます。例えば、工事車両が通るエリアの確保をはじめ、クレーンや資材置場の設置計画など。また、工事に関わる届出を各所に提出しておくのも作業計画の一つです。また、音が大きい作業やダンプカーなどの通行に備えて近隣住民の方へお知らせを行うといった配慮も必要です。

建主・Aさん
あぁ! たまに自宅のポストに「工事のお知らせ」が入っていたり、マンションの掲示板に貼られていたりしますが、アレですね。今後のご近所さんとの関係性を考えると、細かいけれど大事なこと。それは建設会社の方が手配しているのですね。

賃貸マンションマスター
そうですね、こうして着々と工事の準備が進められます。建築現場では危ない所もあるので、関係者以外の侵入を防ぐためにパネルやシートで囲い、入口付近に工事工程表(週間予定表)や工事概要を掲示します。ちなみに、工事期間中に建主が直接関わるものとしては、地鎮祭のほかにも定期的な会議がありますよ。ケースバイケースで参加者は異なりますが、会議は建主、設計担当者、現場担当者を中心に行われ、工事を進めるにあたり大事なプロセスとなります。

建主・Aさん
建主が会議に参加するんですね!

賃貸マンションマスター
建主の意見・判断が必要な場合など、状況に合わせて参加するような感じですね。まずは、設計図通りに滞りなく工事が進められるよう、現場の進捗状況や今後の進行についてその都度報告が行われます。このほか設計図で分かりにくい部分もあるので、建築現場の会議で細かな材料の種類や色などの最終決定を行うのです。この決定事項を受けて、各業者に発注したり、現場の職人さんに指示したり建築現場が動きます。

建主・Aさん
工事が始まったら建主は“蚊帳の外”というわけじゃないんだ。会議に参加することで“賃貸マンションを一緒に作り上げる”という実感が湧くし、建築現場に出入りして建物ができあがっていく様子を見られるのはうれしいですよね!

賃貸マンションの性能と寿命を左右する、「杭工事」と「基礎工事」の重要性を知る。

賃貸マンションマスター
いよいよ工事開始(着工)! 建築工事の最初のステップは「杭工事」です。建物をしっかりと支え、維持できるように、地面と建物を杭で強固につなぎ合わせる工事が行われます。設計段階で行った土地調査(地盤調査)と杭の選定をしましたが、実際にマンションを支える杭がその地盤(地質)に合っているか、支持層(マンションを支える固い地盤)にきちんと到達するか、最終確認をします。もともとの地盤調査の結果と相違があることは滅多にありませんが、結果によっては設計していた杭よりも長い杭を打つことも。とにかく、石橋を叩きながら渡るような状況で、現場での厳しいチェックを挟みながら慎重に工事を進めるのです。

建主・Aさん
念には念を、という進め方ですね!

賃貸マンションマスター
杭工事の次は、建物の荷重を地盤に伝達させる重要部分である「基礎工事」に移ります。いわば、土台づくりですね。マンションの基礎工事では地面を掘っていきますが、地面を掘り下げる時に周りの土が崩れないように山留め工事をします。硬い粘土質の土壌の場合は簡易的な山留めで補えますが、水に弱い軟弱な土壌の場合は鉄板で仕切ったりコンクリートで壁を立ち上げたり頑丈にガードします。

建主・Aさん
周りの土が崩れると一大事となるので、しっかりガードしてもらわないといけませんね。見えなくなる部分ですが、一つひとつの作業が大掛かりなんですね。

賃貸マンションマスター
最終的に基礎部分は地面に埋まり見えなくなる箇所ですが、建物の性能を左右する重要なポイントですからね! ところで、マンションの基礎はコンクリートで覆われていますが、その内側には鉄筋や、給水管、排水管、電気・ガスなどの設備配管が仕込まれています。基礎工事では生コンクリートを流す前に、配管を通す部分にスリーブと呼ばれる穴を予め設けておく必要があります。なので、細部まで入念に最終確認し、コンクリートの強度も確かめて、基礎部分に生コンクリートを流し込むという流れ。工事関係者の人々はこの瞬間が一番緊張するシーンだとか…! こうして強固に仕上がった基礎の上に建物が建ち上がっていきます。

あと、そうそう、地盤面に近い一階の床面は土間コンクリートと呼ばれています。基礎の上に土を埋め戻した後に砕石を敷き、その上に鉄筋を組み、生コンクリートを流します。一階に住戸がある場合は断熱材を敷く場合もあるそうですよ。

ついに地上に躯(く)体(たい)現る…!1フロアずつ丁寧に仕上げる「躯体(くたい)工事」。

賃貸マンションマスター
これから建物の本体部分に着手しますよ! 「躯体工事」は建物のかたちをつくる重要な工事で、工期の大半を占めます。さて、突然ですがここで問題です。鉄筋コンクリートの壁や柱を作るためには、どういう手法で行うでしょうか!?

建主・Aさん
え、え、想像をしたこともなかったです。コンクリートの壁を持ってきて積み上げていく…とか!??

賃貸マンションマスター
残念ながら違います(笑)。基礎工事のように、建築現場でコンクリートを流し込み、壁や床を作っていきます。そのためには、コンクリートを流し込むための「型」を作らなければなりません。そこで登場するのが、型枠大工の職人さん。専任の型枠大工が設計図をもとに型枠を作るのです。柱や梁の中心線や床・壁の位置、水平・垂直の確認など、正確な位置関係をはじきだし(業界用語で「墨出し」と言います)、墨出しされた線の上に鉄筋と型枠を組み立て、そこにコンクリートを流し込むのです。

建主・Aさん
なるほど! その後、型枠を外すということですか?

賃貸マンションマスター
そうですね。約1ヶ月、コンクリートがしっかり固まっていることを確認できたら型枠を外します。柱・壁・床の躯体工事を1フロアずつ順番に進め、型枠づくり、型枠&鉄筋の組み立て、コンクリート流し込み、型枠解体を最上階まで繰り返して躯体工事が終了! なお、審査機関による検査を受け、合格しないと次のステップに進めないので、そういった部分でも“石橋を叩きながら渡る”慎重かつ安心・安全な建築環境が保たれていますよ。

建主・Aさん
工事の多さや複雑さを教えてもらい、建築現場の地道かつ丁寧な仕事ぶりが伺えたように思います。見えない部分にこそ、建物の性能や耐久性を守る基礎がしっかり築かれているんだなとわかりました。マスター、ありがとうございました!

●次は賃貸マンションの“顔”の部分である、「外装」の工事について詳しく学びます。